いまだ飛べない737MAX、航空各社の「稼ぎ時」を直撃
通常であれば、米航空各社は最繁忙期の夏により多くのチケットを売って空席を埋めようとしのぎを削る。写真は3月、運航停止になり米カリフォルニア州のビクタービル空港に駐機されたサウスウエスト航空の737MAX型機(2019年 ロイター/Mike Blake)
通常であれば、米航空各社は最繁忙期の夏により多くのチケットを売って空席を埋めようとしのぎを削る。だが、運航停止が続く航空大手ボーイング737MAX型機を抱えている会社は、機材不足と需要の高まりという、まったく様相の異なる問題に直面している。
燃料効率が良く、単通路型の737MAX型機が2件の墜落事故を起こして運航停止になったことで、米航空会社の春と夏の北半球運航スケジュールに大きな影響が出ており、繁忙期恒例の「利益獲得競争」に参戦できなくなる可能性も出ている。
「収益目標はすぐ目の前にあり、見えてはいるが、達成できない」と、米サウスウエスト航空のパイロット団体の広報担当者マイク・トレビーノ氏は言う。
737MAX型機の世界最大の運航会社で34機を保有するサウスウエスト航空と、24機を保有するアメリカン航空は、同型機を8月までの運航スケジュールから外した。
サウスウエスト航空のこの決定は、6月8日─8月5日の1日の運航数4200便のうち、160便がキャンセルされることを意味している。アメリカン航空の場合、8月19日までの運航停止により、夏季1日の運航便数の1.5%にあたる115便がキャンセルされることになる。
他のライバル航空会社と異なり、737型機しか保有していない格安航空会社(LCC)のサウスウエスト航空は、737MAX便のキャンセルなどにより2月20日─3月31日だけで1億5000万ドル(約168億円)の収益減があったと推計している。
航空各社は現在までのところ、737MAX型機運航停止の影響を第1・四半期を超えて推計するには時期尚早だとしている。だが、長期間のキャンセルが予定されていることは、急速に売り上げを伸ばしていた同型機の早期の運航再開を各社が予期していないことを示している。
737MAX型機は、昨年10月にインドネシアのライオン航空機が墜落したほか、今年3月にエチオピア航空機が墜落したことを受けて運航が停止された。わずか5カ月の間に相次いで起きたこの2件の墜落事故では、乗客乗員は全員死亡した。
ボーイングには、両事故で注目を集めた失速防止の制御ソフト「MCAS」の修正版を提供し、同型機が運航再開に十分に安全であることを世界各国の航空規制当局に納得させるよう、プレッシャーがかかっている。これには、最低でも90日はかかるとみられている。