トランプの対中貿易戦争で米企業が悲鳴 輸入関連を襲う3つのコスト増
貿易保険を手がけるアバロン・リスク・マネジメントのリサ・ゲルソミノ最高経営責任者(CEO)によれば、同社のある顧客は税関ボンドのコストが5万ドルから2600万ドルに上昇したという。
税率の引き上げに伴い、米税関・警備局(CBP)は数千社の輸入企業に対し、従来のボンドでは保証額が不十分であるとの通知を送ることになった。
今年1月以降、CBPは約3500件の通知を発行。ローノーク・インシュアランス・グループがまとめたデータによれば、2006─2017年に発行された通知は、年平均2070件だったという。
通知を受領してから1カ月以内に輸入企業が保証金を追加しない場合、税関当局は輸入貨物を差し押さえ、追徴金を課すことができる。
企業はボンドを納めなければ何も輸入することができない。その金額は、年間の関税や手数料などの合計推定額の10%に設定されている。
トランプ政権は中国からの輸入品500億ドル相当に25%の関税を課し、さらに2000億ドル相当の輸入品に10%の関税を追加した。中国製品に対する年間の関税額だけでも325億ドルになる。税関ボンドは追加で32億5000万ドルが必要になる計算だ。
これとは別に、米政府は鉄鋼の輸入に25%、アルミニウムの輸入に10%の関税を課している。
国際物流の代行業者DJSインターナショナル・サービスを率いるデビッド・メイヤー氏は、「何百万ドルという資金が出ていくという話だ」と言う。
「しかし、裏庭に生えている金のなる木を揺すって、ちゃんとそれだけの資金を用意できるわけではない」。「どう見ても、輸入企業にとっては重荷になる」
メイヤー氏の顧客は、半数以上で税関ボンドの金額が少なくとも10倍に膨らんでいる。
税関への保証金が急増
一部の輸入企業に苦痛をもたらす事態は、その一方で、貿易保険業者にとっては願ってもないチャンスになっている。輸入企業が関税を支払えないと保険会社は困難な立場に追い込まれるから、彼らはボンドの額に見合う担保を求める。通常はボンド額の1─1.5%を請求している。
ローノーク・インシュアランス・グループのコリーン・クラーク副社長によれば、同社では業務量が大きく増えたため、スタッフが週末も処理に追われているという。
例えば、ローノークはある鉄鋼輸入企業に9万ドルの担保を求めたという。この輸入企業は、ゼロだった関税が年間9000万ドルに急増したことで、900万ドル相当のボンドを差し入れるよう求められていた。
結果的にこの企業は、3億6000万ドル相当の鉄鋼の輸入を続けるために、年間9900万ドル超を工面する必要に迫られた。