最新記事

貿易

ボーイング、737MAX墜落事故で米中貿易協議絡みの大量受注に暗雲

2019年3月17日(日)12時08分

3月14日、米政府関係者らは、米中貿易協議に関連して中国が間もなく米航空機大手ボーイングの旅客機を近く大量受注すると期待していたが、エチオピアで墜落事故を起こした737MAXを中国が運航停止としたことで、期待に冷や水が浴びせられた。シカゴのボーイング本社で2013年え4月撮影(2019年 ロイター/Jim Young)

米政府関係者らは、米中貿易協議に関連して中国が間もなく米航空機大手ボーイングの旅客機を近く大量受注すると期待していたが、エチオピアで墜落事故を起こした737MAXを中国が運航停止としたことで、期待に冷や水が浴びせられた。複数の業界筋が明らかにした。

米中協議が一定の進展を見せたここ数週間で、中国がボーイング機を100機以上、100億ドル超相当を定価で発注する可能性が浮上していた。

関係筋らによると、両国が貿易戦争を繰り広げてきた間、中国の公的部門が購入を抑えてペントアップ需要(繰り越し需要)が積み上がっていた兆しがあるのに加え、中国民間部門も2018年にボーイング機を1機も発注していないことから、大量発注の期待が高まった。

しかし中国が737MAXの運航停止を決めたことで、発注がいつになるか不透明になったと関係筋らは言う。

ティール・グループの航空アナリスト、リチャード・アブラフィア氏は「中国はボーイングにとって最大の輸出市場なので、今回の問題が(米国側の)懸念材料リストに載ったのは間違いない」と語る。

中国は10年以内に米国を抜いて世界最大の航空市場となると見られている。同国はボーイングに加えて欧州エアバス社の航空機を大量に購入するとともに、国内でも航空機事業の育成に投資してきた。

現在、ボーイング機の4分の1は中国が購入している。同社は中国が今後20年間で自社製ジェット機7700機、1兆2000億ドル相当を発注すると予想している。

中国はこれまで、重要な外交イベントに合わせて定期的に大量の旅客機を発注してきた。例えばトランプ米大統領による2017年の訪中時には、ボーイングのジェット機を300機購入する取り決めを結んだ。

ただアナリストによると、これは新規受注だけでなく過去の発注との重複分や、将来的な購入契約を合わせた数字なので、貿易摩擦による影響は把握しにくい。

航空業界で過去に交渉に当たった人物によると、今後新たに大量発注が発表されるとしても、同様の状況が当てはまるかもしれない。

中国は、ペントアップ需要を満たすためにエアバス機の発注を増やす可能性もある。中国の航空会社は、貿易戦争への干渉を避けたいとの考えや景気減速を背景に、エアバス機の発注も抑えてきた。

フランスのマクロン大統領の側近は14日、エアバスが中国と長期間にわたって交渉してきたナローボディー機(通路が1本の航空機)の購入について、契約締結に近づいているとの見方を示した。

米中が防衛戦争を繰り広げる中、ボーイングは中国で事業の足場を広げる一方で、公な商談の場ではトランプ大統領と衝突しないよう、慎重な言動に徹してきた。

(Eric M. Johnson記者 Tim Hepher記者 Brenda Goh記者)

[シアトル/パリ/上海 14日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中