最新記事

5Gの世界

米中5G戦争ファーウェイの逆襲 米政府提訴「成功する可能性ある」

HUAWEI PUNCHES BACK

2019年3月19日(火)06時50分
ジョナサン・ブローダー(外交・安全保障担当)

各国が5G製品の供給元の選定を進めるなか、米中の対立は激しさを増している。中国にとっては広域経済圏構想「一帯一路」を補完する存在として習近平(シー・チンピン)国家主席が提唱する「デジタル・シルクロード」を実現する絶好の機会だ。

一方、トランプ政権にとって5Gは国家安全保障と経済支配の両面で大きな意味を持つ。「トランプはこの経済問題を克服することが重要だと考えている。経済のバランスを正して中国に他国同様にルールを守らせるためだけでない。将来の政治的、軍事的パワーの不均衡を防ぐためにも、彼の頭の中では、2つは密接に関係している」と、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は1月にワシントン・ポスト紙に語った。

この2つの懸念が根底にあるからこそ、トランプ政権は他国にファーウェイの排除を要請したり、中国に貿易戦争を仕掛けたりしてきた。

昨年12月、カナダはアメリカの要請に応じ、対イラン制裁に違反して製品をイランに輸出した疑いで、ファーウェイの創業者兼CEOの任正非(レン・チョンフェイ)の娘で副会長兼CFO(最高財務責任者)の孟晩舟(モン・ワンチョウ)を逮捕、アメリカへの身柄引き渡しに向かっている。さらに米司法省は、米通信大手のTモバイルからロボット技術を盗んだとして同社を起訴している。

3月に入るとドイツが5G移動通信網の整備の入札でファーウェイを排除しない方針を打ち出した。するとトランプ政権はファーウェイ製品を採用すれば、米情報機関の機密情報などの共有を制限するとドイツに警告した。

それでも、5Gの支配権争いで中国はいまだにアメリカより先行していると、オバマ政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたジェームズ・ジョーンズは指摘する。

「(5Gの)マーケティングでアメリカは後れを取っている。誰であれ、この競争に勝った者が世界の独占的なプレーヤーとなる。『安くて信頼できて、裏でどこかとつながっていない』という中国のメッセージはとても魅惑的だ」

ファーウェイ批判の本当の目的

ただしジョーンズは、同盟国の選択は明らかだろうとも語っている。「安くて魅力的だが、個人情報や知的財産、機密情報が全て北京に筒抜けになる極めて脆弱なシステムか、投資の金額を少し引き上げて安全な社会を手に入れるかだ」

こうした主張に対し、ファーウェイも反撃に打って出た。「5Gのマーケティングでアメリカがファーウェイに後れを取っているというジョーンズの指摘は正しい」と、同社の広報担当者は言う。「だがマーケティングだけではない。5G関連技術とその配備についても、アメリカ企業はファーウェイやその他の世界より遅れている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与

ビジネス

英インフレ期待上昇を懸念、現時点では安定=グリーン

ビジネス

アングル:トランプ政権による貿易戦争、関係業界の打

ビジネス

中国の銀行が消費者融資金利引き上げ、不良債権増加懸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中