最新記事

雇用

メルカリのIT技術者大量採用に見るインドトップ大学の就活ルール

2018年10月4日(木)12時20分
長瀧 菜摘(東洋経済 記者)*東洋経済オンラインからの転載

メルカリが現在サービスを展開するのは日本、アメリカ、イギリスの3カ国。インドには進出していないため、一般にメルカリの名を知る国民は多くないが、「IITではテック企業としてすでに有名」(サヒルさん)だという。実際、今回入社した外国籍社員の中でも、インド出身者が32人とダントツに多い。

知名度を一気に高めたのが、先述のハッカソンだ。インド西部の大都市ムンバイのホテルを会場として、参加者は2日間でインドの社会問題を解決するデジタルソリューションの考案から開発、発表までを行った。「(インドでの採用プロジェクトを)一気に立ち上げたかったので、宣伝も大々的に行った」(メルカリ・HRグループの石黒卓弥マネジャー)。現地の採用事情に詳しい代理店と組み、インド全国から参加者を募集。宣伝用のTシャツは500枚を配った。

最終的には1500人の応募を獲得し、事前の課題で30人に絞り込んだ。トップ層の学生には賞金を出したほか、上位10人は日本へのツアーに招待。メルカリ本社の見学や社員との交流の場を設けるなど、会社の理解促進に努めた。参加者がオフィスで撮った写真や、メルカリを訪れた感想をフェイスブックなどのSNSで拡散したことで、さらにメルカリの企業イメージが浸透するという循環を生んだ。

インドトップ大学では採用競争が熾烈

newsweek_20181004_121739.jpg

メルカリは海外大学の学生を対象にしたコンテストなどの開催を急激に増やしている。写真は中国人学生向けアプリ開発コンテストの様子(記者撮影)

メルカリがここまで現地でのアピールに力を注いだ背景には、IIT特有の"就活ルール"がある。企業は、就職の担当部署が主導し1週間ほど開催する「面接会」で枠をもらい、その中で一気に面接から内定出しまでを行わなければならない。加えて、一度内定を承諾した学生はそれ以降面接会に参加できない。つまり、トップ層の学生を採用したければ、企業はなるべく早い日程で枠をもらう必要がある。

ここでものを言うのが、前年の採用実績や待遇(給与)のよさ、企業そのものの知名度といったもの。メルカリが面接会に参加するのは今回が初めてだったため、待遇と知名度で勝負する必要があった。世界中のテック企業が競合となる中、メルカリは参加したIIT5キャンパスの面接会のうち、1都市で1日目の枠を、2都市で2日目の枠を獲得。結果として、当初目標の15人を大幅に上回る32人の内定承諾に至った。

サービス展開を行っていない地域でも、アピール次第で優秀な学生を採用できる──。そんな手応えを得たメルカリは今年、海外学生向けの説明会やイベントを相次いで開催している。9月中旬には、コンピューターサイエンスを学ぶ中国の学生向けに、本社でアプリ開発コンテストを実施した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米でイスラム教徒差別など増、報告件数が過去最多=権

ビジネス

午後3時のドルは147円前半で売買交錯、一時5カ月

ワールド

フィリピン前大統領逮捕、麻薬戦争巡りICCが逮捕状

ビジネス

2月工作機械受注は前年比3.5%増=工作機械工業会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 2
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手」を知ってネット爆笑
  • 3
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 4
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 5
    「中国の接触、米国の標的を避けたい」海運業界で「…
  • 6
    鳥類の肺に高濃度のマイクロプラスチック検出...ヒト…
  • 7
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 8
    「汚すぎる」...アカデミー賞の会場で「噛んでいたガ…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 8
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中