シェアリングエコノミーで人をつなぐ、オランダ発のコワーキング
最後に、ユトレヒト駅舎に直結するS2Mの本部を訪ねた。デザインコンセプトは「テンションが生まれる空間」と共同オーナーのロナルド・ファン・デル・ホフは言う。内装にはさまざまな色や素材が用いられ、ミニマルとは正反対。また廊下をあえてカーブさせていたり、天井と床が並行でなかったり。どれも空間に緊張感を生み出し、思考を喚起するのが狙いだ。
自分が持つ社会資本をシェアすることが"S2Mの利用料"の代わりとなる
どのロケーションにおいても、ユーザーはオンラインで予約するが、あわせて自分が持つ知識やスキル、専門分野を登録するよう求められる。
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登録内容は各拠点に置かれた「セレンディピティ・マシーン」上に表示され、誰もが閲覧可能。そのときS2Mに集まっているユーザーが持つ社会資本を一目で確認できることになる。これが「無料」のコワーキングスペースを可能にした根幹のシステムだ。
「私なら、『アムステルダムで活動中、PRやイベントマネジャーができて......』などと登録してあります。それを見て、私に何か聞きたい、相談したいという人がやってくれば協力します。例えば、『イベントを企画しているが、いいケータリングの会社を知らないか』と聞かれたら、そこで教えてあげられる。つまり、私が持つ社会資本をシェアするわけですね。S2Mでは、これが支払いの代わりなんです。といっても、堅苦しいことは何もありません。他の人と普通に交流して、情報交換をしていれば大丈夫です」(ヨンカー氏)
ヘルプデスクや営業、宣伝部門すら、セレンディピティ・マシーンが代行する。それが必要ならば、ネットワークでつながったユーザーが自発的にその役割を担うというから、コスト削減効果も大きい。しかし、コワーキングスペースが無料だというなら、S2Mのマネタイズはどこで行われるのだろうか。
答えは、併設されたミーティングルームにある。使用座席数に応じて課金され、混雑する時間帯は料金が高くなる。他にも特徴的な課金方法がある。例えばアムステルダムの拠点では12時から14時まではランチが提供されるが、ここでも5ユーロかかる。