最新記事

シリコンバレー

ユニコーン企業はVCバブル崩壊後に栄える

2015年12月7日(月)15時52分
ケビン・メイニー

 しかしユニコーンは、大半が消費者が望む製品やサービスを持っている。5年前には、家庭を訪問するピアノ教師がクレジットカードで支払いを受けることなど不可能だった。今では、多くの自営業者や小企業がスクエアのモバイル決済を利用している。2015年上半期、スクエアは5億6060億ドルの売り上げを上げた。

 その意味ではスクエアは、他のユニコーンにとっての水先案内人だと言っていいだろう。ビジネスそのものは健全なのだ。損をしたのは、企業価値を釣り上げ過ぎた投資家たちだ。ユニコーンは未公開なので、株価が下がっても影響は限られる。よいビジネスをしていれば生き残る。

 スタートアップにとっては、未公開株バブルのなかにいるよりはるかに健全だ。

 オフィス賃料が下がり、能力のある人材を獲得しやすくなるのは好都合だ。ドットコム・バブルの頃に比べれば、起業して製品を発売するまでのコストは数百分の1ぐらいになった。安価なクラウド・コンピューティングやオープンソース・ソフトウエアのおかげだ。投資マネーが減ったからといって革新的な技術が生まれにくくなるということにはない。

 投資マネーの過剰な流入は、スタートアップ企業の自然なリズムを妨げた。未公開のままでも資金調達に苦労しないので、多くの創業者はIPOのタイミングを逸してしまった。投資顧問会社プレイ・ビガーによると、ITバブル崩壊以降のテクノロジー企業のうち最も企業価値が安定している企業はほとんどが創業後6~10年の間にIPOを行った企業だという。フェイスブック、グーグル、ツイッターなどがあてはまる。これよりIPOを急いだり遅らせたりした企業はほとんどの場合、長期的な価値を創造できていない。

成功する企業は創業後6~10年でIPOする

 テクノロジー企業にはテクノロジー企業のペースがある。初めは事業計画を練る時期。6~10年後までには、その企業がビジネスとして成り立つかどうかがはっきりする。それからIPOをして事業を拡大する。このペースがシリコンバレーに戻ってくれば、企業にはプラスになることを歴史は示唆している。

 スタートアップに注ぎ込まれた数十億ドルをほとんど役に立たない。データによれば、未公開の間に企業が調達した金額と、株式公開をした後の長期的な成長との間には、ほとんど相関性がない。

 多くの偉大なテクノロジー企業が、熱狂の後に生まれているのもその証左だ。ウーバーは2008年の世界金融危機の翌年に創業している。グーグルはITバブル後の2000年に花開いた。マイクロソフトは石油ショックのただ中の1975年に生まれた。

 つまり、未公開企業バブルがつぶれた後には、スタートアップにとっての好機がやってくるということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メキシコ、関税懸念でも25年成長率目標を2―3%に

ビジネス

12月鉱工業生産速報は前月比+0.3%=経済産業省

ビジネス

12月小売業販売額は前年比+3.7%=経産省(ロイ

ビジネス

都区部コアCPI、1月は+2.5%に伸び拡大 食料
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中