ユニコーン企業はVCバブル崩壊後に栄える
しかしユニコーンは、大半が消費者が望む製品やサービスを持っている。5年前には、家庭を訪問するピアノ教師がクレジットカードで支払いを受けることなど不可能だった。今では、多くの自営業者や小企業がスクエアのモバイル決済を利用している。2015年上半期、スクエアは5億6060億ドルの売り上げを上げた。
その意味ではスクエアは、他のユニコーンにとっての水先案内人だと言っていいだろう。ビジネスそのものは健全なのだ。損をしたのは、企業価値を釣り上げ過ぎた投資家たちだ。ユニコーンは未公開なので、株価が下がっても影響は限られる。よいビジネスをしていれば生き残る。
スタートアップにとっては、未公開株バブルのなかにいるよりはるかに健全だ。
オフィス賃料が下がり、能力のある人材を獲得しやすくなるのは好都合だ。ドットコム・バブルの頃に比べれば、起業して製品を発売するまでのコストは数百分の1ぐらいになった。安価なクラウド・コンピューティングやオープンソース・ソフトウエアのおかげだ。投資マネーが減ったからといって革新的な技術が生まれにくくなるということにはない。
投資マネーの過剰な流入は、スタートアップ企業の自然なリズムを妨げた。未公開のままでも資金調達に苦労しないので、多くの創業者はIPOのタイミングを逸してしまった。投資顧問会社プレイ・ビガーによると、ITバブル崩壊以降のテクノロジー企業のうち最も企業価値が安定している企業はほとんどが創業後6~10年の間にIPOを行った企業だという。フェイスブック、グーグル、ツイッターなどがあてはまる。これよりIPOを急いだり遅らせたりした企業はほとんどの場合、長期的な価値を創造できていない。
成功する企業は創業後6~10年でIPOする
テクノロジー企業にはテクノロジー企業のペースがある。初めは事業計画を練る時期。6~10年後までには、その企業がビジネスとして成り立つかどうかがはっきりする。それからIPOをして事業を拡大する。このペースがシリコンバレーに戻ってくれば、企業にはプラスになることを歴史は示唆している。
スタートアップに注ぎ込まれた数十億ドルをほとんど役に立たない。データによれば、未公開の間に企業が調達した金額と、株式公開をした後の長期的な成長との間には、ほとんど相関性がない。
多くの偉大なテクノロジー企業が、熱狂の後に生まれているのもその証左だ。ウーバーは2008年の世界金融危機の翌年に創業している。グーグルはITバブル後の2000年に花開いた。マイクロソフトは石油ショックのただ中の1975年に生まれた。
つまり、未公開企業バブルがつぶれた後には、スタートアップにとっての好機がやってくるということだ。