最新記事

軍事

日本製武器の世界での競争力は

2015年11月9日(月)16時58分
ミナ・ポールマン

 事実、日本の防衛能力を高めることと、日米同盟における不均衡を正すことは密接に関係している。例えば、日本が目指すオーストラリアの潜水艦の共同開発。これは日本が「負担の共有」姿勢を示すことで、同盟国アメリカに見放されるかもしれないとの不安を和らげようとしている典型的な事例だ。日本は自らの安全保障能力を拡大しながら、アメリカをつなぎ留めようとしている。

 武器輸出により「私たちは儲け、中国に拮抗し、同盟国とのパートナーシップを強化できる。それはウイン・ウイン・ウインの状況をもたらす」と、政策研究大学院大学の道下徳成教授は軍事情報誌ディフェンス・ニュースに語っている。

 しかし、外交手段として武器輸出を行ってこなかった日本には、大きな壁も立ちはだかる。防衛装備移転三原則は安倍政権の方針として新しく打ち出されたものだが、法制化されたわけではなく、不確定要素が残るなかで産業界は慎重な判断を迫られるだろう。実際、特に武器の使用目的や転売に関する規制の法制化は大きな課題だ。

 輸出した武器が最終的にどのように使われるのか、その追跡や監視は頭痛の種になる。ガンヤードが指摘するように、直接的・間接的を問わず、日本が供給元として名指しされて恥ずかしい思いをするような国または組織に、日本製の兵器が渡ってしまったら一大事だ。

 日本政府はより明確な指針を示すだけでなく、兵器製造の拡大で生じるリスクも共有する姿勢を見せる必要がある。そのためには、潜在的なバイヤーに対する低利の融資や、研究開発への助成などを行うべきだ。

 アバセントのガンヤードは、日本が「強固な防衛産業基盤をベースに戦略的抑止を構築する」ために「買い取り」という手段があると、産経新聞グループのニュースサイト、SankeiBizに寄稿している。「企業の吸収・合併、そして国防関連の知的所有権購入というアプローチによって世界規模の国防産業としての地位を『買い取る』ことができる」と、ガンヤードは指摘する。

 しかし、ここでも企業には動機を与える必要がある。日本企業は、海外の非防衛関連企業よりも防衛関連企業を買収するほうが得策だと納得しなければならない。たとえ将来的にリスクを伴う可能性があったとしても、国際的な防衛企業のほうが買収するだけの価値がある、と。

狙いはニッチな小型装備

 抱え得るリスクとは経済的な損失だけでなく、ブランド力の低下もある。新明和工業、三菱重工業、川崎重工業、日立、東芝などの大企業は「死の商人」というレッテルを貼られたくはないはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中