日本製武器の世界での競争力は
事実、日本の防衛能力を高めることと、日米同盟における不均衡を正すことは密接に関係している。例えば、日本が目指すオーストラリアの潜水艦の共同開発。これは日本が「負担の共有」姿勢を示すことで、同盟国アメリカに見放されるかもしれないとの不安を和らげようとしている典型的な事例だ。日本は自らの安全保障能力を拡大しながら、アメリカをつなぎ留めようとしている。
武器輸出により「私たちは儲け、中国に拮抗し、同盟国とのパートナーシップを強化できる。それはウイン・ウイン・ウインの状況をもたらす」と、政策研究大学院大学の道下徳成教授は軍事情報誌ディフェンス・ニュースに語っている。
しかし、外交手段として武器輸出を行ってこなかった日本には、大きな壁も立ちはだかる。防衛装備移転三原則は安倍政権の方針として新しく打ち出されたものだが、法制化されたわけではなく、不確定要素が残るなかで産業界は慎重な判断を迫られるだろう。実際、特に武器の使用目的や転売に関する規制の法制化は大きな課題だ。
輸出した武器が最終的にどのように使われるのか、その追跡や監視は頭痛の種になる。ガンヤードが指摘するように、直接的・間接的を問わず、日本が供給元として名指しされて恥ずかしい思いをするような国または組織に、日本製の兵器が渡ってしまったら一大事だ。
日本政府はより明確な指針を示すだけでなく、兵器製造の拡大で生じるリスクも共有する姿勢を見せる必要がある。そのためには、潜在的なバイヤーに対する低利の融資や、研究開発への助成などを行うべきだ。
アバセントのガンヤードは、日本が「強固な防衛産業基盤をベースに戦略的抑止を構築する」ために「買い取り」という手段があると、産経新聞グループのニュースサイト、SankeiBizに寄稿している。「企業の吸収・合併、そして国防関連の知的所有権購入というアプローチによって世界規模の国防産業としての地位を『買い取る』ことができる」と、ガンヤードは指摘する。
しかし、ここでも企業には動機を与える必要がある。日本企業は、海外の非防衛関連企業よりも防衛関連企業を買収するほうが得策だと納得しなければならない。たとえ将来的にリスクを伴う可能性があったとしても、国際的な防衛企業のほうが買収するだけの価値がある、と。
狙いはニッチな小型装備
抱え得るリスクとは経済的な損失だけでなく、ブランド力の低下もある。新明和工業、三菱重工業、川崎重工業、日立、東芝などの大企業は「死の商人」というレッテルを貼られたくはないはずだ。