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M&A米製薬ファイザー、1600億ドルでアイルランドのアラガンを買収 世界最大手誕生へ
買収後のファイザー本社をアイルランドに移すことに「税金逃れ」と批判の声
11月23日、米製薬ファイザーは同業アラガンを約1600億ドルで買収することで合意した(2015年 ロイター/Carlo Allegri/Thomas White/Files)
米製薬大手ファイザーは23日、アイルランドに本社を置く同業アラガンを約1600億ドルで買収することで合意した。買収により世界最大の製薬会社が誕生する。米国より法人税率が低いアイルランドに本社を移すことで税負担軽減の狙いもあると見られる。
1株あたりの買収額は363.63ドル。アラガンの前営業終値は312.46ドルだった。買収規模はヘルスセクターで過去最大となる。
アラガンの株主は1株あたり新会社の株式11.3株を受け取る。ファイザーの株主は現金もしくは、ファイザー株1株あたり新会社の株式1株を受け取る。ただ現金の部分は総額60億─120億ドルの範囲内とする。
手続き上はアラガンによるファイザーの買収となるほか、2016年下半期と見込まれる買収手続き完了後は本社はアラガンの本社があるアイルランドに移される。ただ新会社の主導権を持つのはファイザーで、ファイザーのイアン・リード最高経営責任者(CEO)が新会社のトップを務め、アラガンのブレント・ソンダースCEOが最高執行責任者(COO)に就く。
アイルランドの法人税率は12.5%と米国の35%より大幅に低く、今回合意された案件はタックス・インバージョン(課税逆転)としては最大規模となる。
2016年米大統領選の民主党最有力候補のヒラリー・クリントン前国務長官は、こうした動きを阻止する措置を導入することを確約。同じく民主党候補のバーニー・サンダース氏はオバマ政権に対し同買収案件を阻止するよう訴えた。オバマ大統領自身もこれまでにタックス・インバージョンに対する措置を講じる姿勢を示している。
23日終盤の米株式市場でファイザーの株価は前営業日終値比2.7%安の31.31ドル近辺、アラガンの米市場上場株は3.1%安の302.7ドル近辺で推移。コスト削減効果が期待されたよりも小さいことが嫌気されたほか、ファイザーが今回の買収により利益率の低い事業を分社化するかどうかの決定を2018年終盤まで2年先送りしたことも売り要因となった。
ガベリ・ファンズのポートフォリオ・マネジャー、ジェフ・ジョナス氏は、決定の先送りは「保守的」だとし、こうした動きに失望したとしている。このほか、経費削減や自社株買いなどについても失望感が広がっており、コーウェンのアナリスト、スティーブ・スカラ氏は「20億ドルとしている3年目のシナジー効果は、1年目で40億ドルのシナジー効果が得られるとのわれわれの予想を下回っている」と指摘した。
ファイザーの主力医薬品は性的不全治療薬「バイアグラ」のほか、高脂血症治療薬「リピトール」、疼痛治療剤「リリカ」など。アラガンはしわとり薬「ボトックス」のほか、アルツハイマー病やドライアイなどのの治療薬に強みを持つ。
操業166年のファイザーにとり、アラガンの買収は過去15年で4件目の買収案件となる。