今こそ持続可能なグローバルビジネスを
開発済みの市場(先進国)と、開発途中の市場(新興国)を扱うセクションは分ける必要がある。企業の組織上、地域ごとのリーダーシップが確立されていることは重要な要素だ。
経営のトップレベルであるボードメンバーには、新興市場の知識をもつ幹部を含めるべき。そして(行き過ぎはよくないが)地域に意思決定を分散させる。過度に中央集権的な企業は、新興市場で失敗しやすい。なぜなら、新興市場で現実に何が起きているのかをよく知らないまま、本部による意思決定がなされてしまいがちだからだ。
新興市場はどこでも「打ち出の小槌」とは限らない。企業はそれぞれの地域や市場にどれほどのチャンスとポテンシャルがあるかを見きわめて資源配分をしていくべきだ。グローバルリーダーは、短期的な見返りを期待してはならない。投資さえすれば自動的に市場をリードできると思ったら大間違いだ。事業を立ち上げる段階で収益が思わしくなくても、企業のブランドを築き上げることに投資していると考えればよい。
いま投資している新興市場でシェアを広げようとする場合に、それまでに同市場で稼いだ利益のみで追加投資を賄ってはいけない。拡大に必要な増加分は決して安くない。他の市場から資金をもってくることを考えた方がベターだ。私のクライアントの多くは、現地で社債を発行したり、さらには現地の証券取引所に上場したりしている。
新興国の企業を買収するチャンス
とにかく企業が陥りやすい「短期主義」を避けることだ。「言うは易く行うは難し」なのだが、昨今では、いわゆる"投資家"たちに四半期ガイダンス(利益予想)を提供することを拒否する企業が増えてきている。CEOたちが、四半期で収益を見る習慣を止めていくならば、株価は下がるかもしれないが、長期的視点をもつ投資家たちを引きつけることになり、株式のオーナーシップが変わっていく。新興市場ビジネスのために企業ができる最善策は、国際ビジネスの何たるかを理解している投資家が多くの株を所有するように仕向けることなのだ。
新興市場で成功するには、長期計画と投資が必要不可欠だ。私のクライアントには、10年、さらには20年の新興市場攻略プランを立てている企業もある。そして、言うまでもないことだが、長期の計画であっても、確実に実行していかなければならない。
また、短期的な市場の混乱に過剰反応せずに、成長戦略を継続していくことが大事だ。新興市場には、不安定さや脆弱さがつきまとう。だが、それが長期プランの遂行を邪魔するようなことがあってはならない。万が一の事態に備えた計画を立てておくことも重要だ。将来、危ない局面に立たされても落ち着いて対処できるよう準備しておくのだ。ただし、そのときにも長期的視点に立った戦略を見失ってはならない。