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「雇用なき成長」のパラドックス

2015年4月24日(金)12時37分
サミ・マフルーン(INSEADアカデミック・ディレクター)、エリフ・ベシャチャブショール・モロー(INSEADシニア・リサーチフェロー)

人間の機知にはかなわない

 若者のパートタイムには教師も多いが、人気があって稼ぎもいいのは「ホワイトカラー職」の請負契約だ。高度なスキルや専門性を持つ人々が企業に自分のサービスを売り、機械による仕事を、人間の価値観を加えた仕事で補完している。

 オランダの成功を支えるもう1つのカギは、起業家精神だ。90年以降、OECD加盟国は個人事業主の割合が軒並み低下。アメリカでも事業所有者は02年以降、急減している。

 しかしオランダでは、個人事業主は92年以降、着実に増えており、12年は労働力の12%に達した。08年には事業所有者の約70%が完全な個人事業だった。

 事業主の割合は、メキシコなど低所得国でも高い。しかし、オランダははるかに裕福で、生産性や雇用率、労働市場参加率も高いレベルを維持している。その大きな理由は、労働市場の柔軟性と適応力だ。

 オランダは経済の価値連鎖を再構築している。人間と機械の新しい分業が生まれ、新しい経済活動を包含し、人間のニーズと技術進歩のバランスを取っている。その過程で、起業的スキル──創造性、起業家精神、リーダーシップ、自己管理、コミュニケーションなど──を重視して、人間が技術革新と歩調を合わせることを可能にしている。

 機械の知性は新しいレベルに到達しつつあるのかもしれないが、人間の機知と創造力と交流にはかなわない。それがオランダに学ぶ教訓だ。

@Project Syndicate

[2015年4月28日号掲載]

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