最新記事

無人機

ドローン配送を阻む規制の壁

アマゾンに試験飛行が認められたが、規制当局との「空中戦」はまだ続く

2015年4月1日(水)12時26分
マーク・ハンラハン

開発競争 各社が本腰を入れる配送用ドローン(写真はDHL) Wolfgang Rattay-Reuters

 ドローン(無人機)でユーザーに商品をお届け──アマゾンの野望が、実現に向けてようやく一歩を踏み出した。

 米連邦航空局(FAA)が先週、アマゾンに配送用ドローンの試験飛行をついに許可。アマゾンは公的な資格証明書を得た上で、ハード面の技術開発や飛行訓練といった目的に限ってドローンを飛ばせるようになる。

 許可と引き換えに、細かな安全規定が義務付けられている。高度はせいぜい122メートルまでで、地上にいる操縦者の目が届く範囲内でしか飛ばせない。

 操縦できるのは自家用機のパイロット免許取得者に限定されている。FAAに報告しなければならないデータも、飛行回数、1回ごとの操縦時間、機器やソフトウエアの不具合、運航や通信面でのトラブルなど、多岐にわたっている。

 これまではアマゾンのドローン計画に対し、派手な宣伝活動の一環との懐疑的な声が強かった。アマゾンは13年以降、「プライムエア」と銘打ったドローンによる配送計画を推進。倉庫から16キロ以内、あるいは30分の飛行圏内のユーザーに商品を届けるのが目標だ。最高時速80キロ、自動操縦で障害物を感知して避けることができるドローンを開発中とも報じられてきた。ここにきてFAAが試験飛行を許可したことで、アマゾンの本気度が裏付けられた格好だ。

 ただ、アマゾンが安全で信頼できる配送用ドローンを開発したとしても、当局の規制が越えられない壁となって立ちはだかりそうだ。FAAは先月、商用ドローン使用に関する規制案を公表。「操縦者の目の届く範囲を超えてはならない」「空から商品を落として渡さない」「一般人の頭上を飛ばない」といった、試験飛行と変わらない厳しい禁止項目が並んでいる。

 こうした規制が実施されれば、配送用ドローンの可能性は封じられてしまう。アマゾンとFAAの「空中戦」はしばらく決着がつきそうにない。

[2015年3月31日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NATOのウクライナ巡る行動に「核紛争リスク」、ロ

ビジネス

トランプ氏、4月2日の相互関税発動に変更なし

ビジネス

米2月の卸売物価は前月比横ばい、関税措置が今後影響

ワールド

トランプ氏「ロシアの正しい対応に期待」、ウクライナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 8
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 9
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 10
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中