サブプライム自動車ローン急増の背景にある格差
焦げ付く心配なしとみて、ウォール街が信用度の低い借り手に高金利ローンを貸し付ける矛盾
車依存社会 金融危機で米政府の支援を受けた自動車メーカーも復活 Rebecca Cook-Reuters
アメリカ人は自動車ローン返済だけは怠らないよう、厳しい家計をやり繰りしている──個人向け融資のデフォルト(債務不履行)率に関する最新のデータで、そんな実態が明らかになった。調査会社エクスペリアンが発表した昨年12月のデータをみると、クレジットカードのローンと住宅ローンのデフォルト率は5カ月連続で上昇しているのに、自動車ローンのデフォルト率だけが低下している。
このデータから家計の優先順位がうかがえる。他のローンの支払いが滞っても、車だけは手放せないと、多くのアメリカ人は考えているようだ。とりわけ、物価の高い都市から郊外に追いやられた低所得層は、車なしでは生活が成り立たない。
信用度が低い借り手も自動車ローンの支払いだけは踏み倒さない――そんな読みもあって、サブプライム(信用度の低い人向け)の自動車ローン残高は急速に増えている。
「過去60年間、(公共交通機関ではなく)道路ばかりを重点的に整備する政策がとられてきたため、アメリカは車に大きく依存する社会になった。郊外から都市に通勤するには車が不可欠だ」と、バージニア工科大学の准教授ラルフ・ビューラー(都市計画)は言う。「裕福な人々が都心部に住み、低所得層は郊外に押し出される現象も進んでいる」
その結果、裕福な人が住む都市では公共交通へのアクセスが改善されているのに、「低所得層が増加している郊外では、労働者が車を持たなければならない矛盾が問題になりつつある」と、ブルッキングズ研究所は11年の報告書で警告している。
都市に住むのは専門性の高い高収入の仕事に就いている人たち。彼ら富裕層は車なしでも生活できるのに、郊外に追いやられた低所得層は車がなければ職にもありつけないのだ。