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「第3の端末」iPadに見えた限界

ユーザーの満足度も高くシェアもダントツなのになぜ売れないのか

2014年8月20日(水)13時32分
ウィル・オリマス

でき過ぎている? iPhoneのように買い換えたくならないのも原因の1つ Mike Segar-Reuters

 アップルのタブレット型端末iPadの売れ行きに陰りが見える。同社の決算報告によれば今年4〜6月期の販売台数は前期比19%減、前年同期比9%減と落ち込んだ。

 iPadがこの世にデビューした4年前、コンピューター市場に激震が走った。iPadの販売台数が急拡大するにつれて専門家からは「PCの終焉」を予言する声さえ上がった。ところが今、PCの売れ行きは安定し(マックはむしろ増えている)、逆にiPadの売れ行きが落ち込んでいる。

 iPadは決して悪い製品ではない。ユーザーの満足度は高く、サムスンやマイクロソフトやアマゾン・ドットコムなどライバルのタブレット相手に圧倒的なシェアを維持している。

 ただしタブレット端末の宿命で、普及には限界がある。飛行機の機内で映画を見たり朝食を取りながら電子メールをチェックするには便利だが、仕事にも使うメインのマシンとしてはパワーも汎用性もデスクトップやラップトップに及ばない。
その結果iPadはスマートフォンやPCに次ぐ「第3の端末」に甘んじている。当然、必要とする人も買える人も限られる。iPadに限らず、アメリカ人の大半はいまだにタブレットを持っていない。

 皮肉だが、PCと同じで、耐用年数が長過ぎるのも問題だ。PCの場合、販売台数の減少は買い替え頻度の減少を反映していた。処理速度も信頼性も向上して頻繁に買い替えなくても済むようになったのだ。

 iPadの場合もたぶん同じだ。アップルによればiPad購入者の50%以上がタブレット初心者だが、新モデルへの買い替え需要が発生するのは当分先だろう。
そろそろ第6世代が登場するというのに、多くのユーザーはまだ第2、第3世代のiPadで満足している。

 何百ドルもする製品が2〜3年で時代遅れになっては消費者はたまらないが、売る側としてはそのほうがありがたい。理想は発売から7年が過ぎても販売記録を更新し続けているアップルのiPhoneだ。

 iPhoneが売れるのは2年でガタがくるからだ。プロセッサの処理速度やバッテリーの寿命が低下し、スクリーンは破損する。

 iPadもそうすればもっと売れるかも?

© 2014, Slate

[2014年8月 5日号掲載]

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