最新記事

中国

習近平、アフリカ重視外交のしたたか

国家主席就任直後の習近平がロシアの次にアフリカ諸国の歴訪を選んだ訳

2013年3月26日(火)15時00分
プリヤンカ・ボガーニ、エリン・コンウェイスミス

微笑外交? 最初の訪問先タンザニアで演説した習近平は中国とアフリカの「対等な関係」を強調した Thomas Mukoya-Reuters

 今月中国の全国人民代表大会(全人代)で国家主席に選出された習近平(シー・チンピン)は、その10日後にはアフリカの地を踏んでいた。

 タンザニアから始まった習のアフリカ諸国歴訪は、途中南アフリカのダーバンで開催されるBRICSサミットへの出席を挟み、最後の訪問地コンゴ共和国まで続く。

 タンザニアの最大都市ダルエスサーラムにある、中国の援助を受けて建設された会議場で演説した習は、前胡錦濤(フー・チンタオ)政権と変わらずアフリカを支援すると誓った。「中国はこれまで通り、アフリカが必要な援助を政治的な要求なしで継続する。中国とアフリカは、対等な関係として友好を深めていく」。

 習はアフリカを「希望と約束の大陸」と呼び、アフリカへの「心からの友情」を強調した。さらに、中国が関心を持っているのはアフリカの天然資源の搾取だけだ、という批判に間接的に答え、「アフリカはアフリカの人々のものだ。アフリカとの関係を発展させる上で、すべての国々はアフリカの尊厳と独立を尊重しなければならない」と語った。

就任直後の歴訪が象徴する「兆候」

 習のアフリカ訪問はこれで6回目で、前回は2011年11月だ。今回の歴訪で習をはじめ中国政府一行は、訪問先の各国で貿易推進や開発援助を約束することになっている。

 さらにBRICSサミットで中国政府は、他のBICS諸国のブラジル、ロシア、インド、南アフリカと共同で出資し、発展途上国のインフラ整備などを援助する「BRICS開発銀行」を発足させる予定だ。

 習は今後3年間で合計200億ドルのアフリカへの借款を約束し、中国とアフリカの貿易額が昨年約2000億ドルに達したことを明かした。資源豊かなアフリカから、中国は鉱物資源など多くの原材料を輸入している。昨年のアフリカから中国への輸入総額は1130億ドルで、この10年で20倍に増加した。

 習の国家主席就任後初の訪問先はロシアだったが、その次がアフリカだというのは象徴的だ。これまで経済的な利害関係しか考えていなかった中国が、アフリカでの政治的な影響力も考慮し始めた兆候かもしれない。

 中国メディアは、アフリカ諸国との良好な協調関係を伝える高揚したプロパガンダ報道で埋め尽くされている。つまり、それが中国政府の至上命題の1つに位置付けられているということだ。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中