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為替ソロスが語る13年の日独貿易衝突
日本の「円安誘導」で輸出を取り合うことになれば、ドイツと衝突するかもしれない
ご意見番 伝説的な投資家ソロスは日独の摩擦を懸念 Pascal Lauener-Reuters
伝説的な投資家ジョージ・ソロスは引退後の今も、世界経済や市場の動向や政治について発言を続けている。世界経済フォーラムが行われたダボスでも金融ジャーナリストたちと会食し、世界経済のご意見番として鋭い警告を発した。
欧州中央銀行(ECB)が債務国の国債を買い支える方針を決めたことで、「ユーロ存続が担保され、市場は一息ついた」と、ソロスは言う。だがユーロを救うことで、ユーロ圏の経済は打撃を受け、危険な政治的不均衡が生まれることになった。その結果「13年は波乱の年となる」というのだ。
ユーロ危機の緩和にドイツが果たした役割はソロスも評価している。問題は、ユーロ救済のためにユーロ圏がドイツなど債権国とギリシャなど債務国に事実上二極分解したことだ。「債権国が主導権を握り、緊縮政策を説いている。これは建設的な施策ではない」と、ソロスは言う。「経済成長なしには膨れ上がった債務は減らせない」
緊縮政策でユーロ圏はさらなる景気後退に陥り、政治的緊張が高まるというのだ。
ユーロ各国と他の先進国との間で「通貨戦争が起きかねない」兆候も気掛かりだという。先進国では例外的に、ECBは量的緩和に踏み切っていない。日本ではようやく積極的な金融政策を推進する政権が誕生、円安誘導で輸出振興を目指している。「これがドイツにとって直接的脅威となる」
日本とドイツは高所得層向け製品の輸出で競合関係にある。円の対ユーロ相場が下がれば、日独間で摩擦が起きる事態も予想されると、ソロスはみる。
中国も不安材料だ。国内で政治的な不満が噴き出せば、政府が日本など外国との対立でガス抜きを図る恐れがある。「日中間のきしみは世界で最も深刻な対立の1つだ」
「ロシアに投資するのは大きな過ちだ」と、ソロスは言う。プーチン政権は「法を遵守しない」ため、ロシアからは資金と人材が流出し、経済は弱体化する一方だ。「プーチンは身の安全のために権力にしがみついている。いずれ事態は好転するだろうが、時間がかかりそうだ」
アメリカ経済について、ソロスはおおむね楽観的だ。ソロスによれば、民主党の金融政策は強い味方に支えられている。弁護士、公務員の労組、それに「私のような熱血リベラルだ」。
[2013年2月 5日号掲載]