孤独な共産主義国、キューバ
キューバでは今も国民の80%近くが政府や国営企業で働いている。平均月収は約20ドルで、生活の基本的ニーズを賄うのも難しい。多くの人が職場から物を盗んだり、大規模な闇市で物を売買してしのいでいる。こうした悪行を減らすことも、政府が国営企業の労働人口を減らす目的の1つだ。
官僚たちは、民間の企業や組合(この国では「非国家部門」と呼ばれる)に新しい雇用を創出することが政府の目的だと言う。政府の統計担当局によると、民間部門の労働人口は昨年、前年の16%から22%に増加した。
だがキューバで自営業者として働くには、細かく制限された181の職種から選ばなくてはならない。ヤシの木の伐採、誕生パーティーに出演する道化師、ラバ追い、ナイフ研ぎ......。キューバ移民の多いマイアミではもちろん、中国やベトナムでも笑われるだろう。
キューバ人がソフトウエア会社や建築会社、トラクターの部品工場を始めようと思えば、国を出るしかない。そのため優れた人材の流出が止まらない。
いま許可されている小規模の企業は、教育を受けた専門家の能力を生かしておらず、彼らが独立して働ける制度でもない。工業や商業の多くの分野は民間に任せたほうが効率的だということも理解されていない。中国とベトナムの現状を見れば、それは明らかなのだが。
医療や教育も維持できず
新たに設立された企業は外国から原料や設備を直接輸入することもできない。銀行の利用や広告などの細かな点まで官僚のうるさい干渉を受ける。
こうした障害の根底にあるのは、社会主義の「完成」と国家による最大限の統制が同一視されていた60年代からまったく変わらない経済モデルだ。外資の誘致も秘密裏にしか行えない。
この経済モデルはとうの昔に立ち行かなくなっていた。現在の経済生産では、フィデル・カストロが59年に成し遂げた革命の成果とたたえられた医療や教育の制度を維持することも不可能だ。そのことを認めたのは、弟ラウルの時代になってからだ。
「急がず、たゆまず」とラウルは言うが、キューバの変化はあまりに遅い。80代になった指導者たちに残された時間は少ないが、彼らにはベネズエラのウゴ・チャベス大統領という強い味方がいる。キューバが変革を急ぐ必要を感じないのは、チャベスがキューバに多額の現金とエネルギー需要の3分の2を提供しているからだ。
キューバの医療のおかげで癌を克服したと言うチャベスは、10月の大統領選挙を前にした支持率調査の大半で、野党統一候補のエンリケ・カプリレスをリードしている。
チャベスが財政支援を続ける限り、キューバの指導者たちは中国型の改革は行わず、独自の共産主義体制をできるだけ長く守り続けるだろう。
From GlobalPost.com特約
[2012年9月26日号掲載]