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ユーロ危機アイスランドは失業克服の優等生
経済崩壊後、失業率を6%まで改善したアイスランドは危機対応のモデルケース
広く薄く アイスランドは国民と金融システム全体で痛みを負担した Ingolfur Juliusson-Reuters
08年の世界金融危機で折からの金融バブルが崩壊し、経済崩壊寸前の苦しみと屈辱を味わったアイスランドが、予想外の回復を遂げている。
経済規模が1割も縮小するほどの深刻な景気悪化を経てきたにも関わらず、失業率は6%程度にとどまり、さらに改善する兆しを見せている。アイルランド失業率が約15%、スペインが25%近いのとは対照的だ。
もちろん人口32万人のアイスランドを、より大きく複雑な欧州諸国と単純比較するわけにはいかない。だが7日付けのニューヨーク・タイムズ紙は、泥沼にはまったままのギリシャやスペインなどとは正反対の危機対策をアイスランドが打ってきたことに着目している。
経済危機下の多くの問題のなかでも、高い失業率はとりわけ厄介だ。経済事情の変化のせいで突然借金返済が苦しくなったら、人々は今まで以上に働いて稼がなければならない。働く時間を増やすとか、副業を始めるとか、収入を増やすためなら何でもするはずだ。
だが、同時に支出を減らすことも考える。ここで問題なのは、多くの人がいっぺんに支出を減らそうとすれば、企業の業績が悪化し、追加的な収入を得るために必要な仕事そのものが減ってしまいかねないということだ。
アイルランドやスペインがまさにそうだ。人々は危機以前よりも収入を必要としているのに、仕事がない。これではめちゃくちゃだ。
バブル崩壊の損失を埋める魔法などない
ユーロ離脱などで自国通貨の価値を切り下げても、経済危機の痛みを取り去ることはできない。誰もが貧乏になるだけだ。だが、痛みを国民と金融システム全体で広く薄く負担することで、高失業による危機悪化のスパイラルに歯止めをかけることはできる。
アイスランドはそのために、同国で最大級の銀行も救済せずに破綻させ、預金支払いを保証し、借金で首が回らない家計や企業には債務免除を行った。とくに営業的には黒字の企業が借金返済に行き詰ってつぶれる黒字倒産を看過すれば、貴重な雇用主を殺すことにもなる。
世界金融危機が起こったとき、アイスランドもアイルランドも海外資金によるバブルに沸いていた。バブル崩壊による巨大な穴を消し去る魔法などどこにも存在しない。
アイスランドとアイルランドは共に高い教育水準を誇り、民主的で安定した政府を持ち、政治の腐敗も少ない。長期的には、どちらの経済も立ち直るだろう。
だが今重要なのは、失業者の目線で政策を行うことだ。国を癒すことができるのは、高失業の長期化を回避できる政府。アイスランドはその点で既に実績を上げているといえそうだ。
© 2012, Slate