最新記事

欧州債務危機

今がユーロ危機を脱する最後のチャンス

ギリシャ再選挙では緊縮策推進派が勝利してユーロ離脱を免れたが、今のままでは世界的な景気後退を防げないと、ブラウン前英首相が緊急提言

2012年6月18日(月)17時07分
タリア・ラルフ

綱渡りは続く ユーロ圏の経済大国に財政危機が広がる可能性はまだあると、ブラウン前英首相は訴える Peter MacDiarmid-Reuters

 今回のG20サミットは、世界にとっての「ラストチャンス」だ――18日からメキシコで開かれるG20開催に先立ち先週、イギリスのゴードン・ブラウン元首相はロイター通信に寄稿したコラムでこう警告した。

 ユーロ離脱の瀬戸際にあったギリシャ、1000億ユーロの支援で合意したスペインにとどまらず、イタリアやフランスにも間もなく財政支援が必要になるかもしれない。そんな状況下で、ユーロ危機が世界的な景気後退を招くのを止めるには、今回のG20サミットが最後のチャンスだと、ブラウンは訴えた。

 サミットの開催国であるメキシコのフェリペ・カルデロン大統領は、環境保護と経済成長の両立や科学技術・農業技術への投資を主要議題にしたいと語っている。しかしブラウンは、一刻を争うユーロ危機を議論すべきだと主張している。「この状況で、いつものように中身のないサミット声明文を出すだけでは、まるで役に立たない」

ギリシャ最悪のシナリオは回避したが

 17日に行われた再選挙でギリシャがユーロ離脱を免れたとはいえ、危機が去ったわけではない。再選挙では、EUの緊縮策を支持する旧与党の新民主主義党と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が議席の過半数を獲得し、連立政権が発足する見通し。これで最悪のシナリオは回避できたとの見方が広がっている。

 それでも、ユーロ圏の経済大国に財政危機が波及する可能性はまだ残っていると、ブラウンは言う。EUで最も堅実とされる「ドイツの銀行でさえ、資本増強が必要になる恐れがある」と警告している。「G20で各国がただちに足並みをそろえて計画を打ち出さなければ、世界的な景気後退に直面するだろう。そうなれば、アメリカの大統領選や中国共産党の体制移行にさえ大きな影響を及ぼす」

 ブラウンの懸念は、EUのリーダーたちも十分理解しているようだ。イギリスのデービッド・キャメロン首相はG20に先立ち、ユーロ圏の首脳陣にビデオ会議を呼び掛けた。ジョゼ・マヌエル・バローゾ欧州委員会委員長も先週、ヨーロッパの指導者は一丸となってこの難局を「乗り切らなければならない」と訴えた。

From GlobalPost.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

10月の全国消費者物価、電気補助金などで2カ月連続

ビジネス

欧州新車販売、10月は前年比横ばい EV移行加速=

ビジネス

ドイツ経済、企業倒産と債務リスクが上昇=連銀報告書

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中