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格差バンコクの最新ホテルは「反デモ隊仕様」
高級ブランド地区にオープンする超高級ホテルが建築にまでデモ隊対策を取り込まなくならないタイの治安事情
階級闘争 ルイ・ヴィトンの店舗前で政権打倒を訴えるデモ隊(10年4月) Eric Gaillard-Reuters
ウォルドルフ=アストリアといえばマンハッタンのパーク・アベニューに位置し、世界各国の首脳や著名人が訪れる絢爛豪華な超高級ホテル。ヒルトングループの最高峰に君臨するこのホテルは今、バンコク中心部での開業を計画しているが、一番のウリはなんとデモ隊の攻撃に耐える造りだという。
デモに負けないホテル? 詳細はまだわからないが、バンコク・ポスト紙によれば、どうやらデモ隊対策が何らかの形で「建築デザインに織り込まれる」らしい。
バンコクではこの数年、失脚したタクシン元首相を支持する農村出身者が多い「赤シャツ隊」と、都市部のエリート層を中心とする「黄シャツ隊」が抗議デモを繰り返し、たびたび暴動に発展。多くの死傷者が出ている。
ホテルのディベロッパーは、1億9600万ドルを投じて60階建てのホテルと住居用タワーを建設しても元が取れるだけの富裕層マーケットがバンコクにはあると自信をもっている。ただし、ウォルドルフ=アストリアが将来的にデモ隊の攻撃対象になりえるという不安はぬぐえないようだ。
計画通りに事が進めば、ホテルと住居棟が建設されるのは、高級ブランドのショッピングモールがひしめくラッチャプラソーンの交差点付近。デモ隊の暴力行為がとりわけ激しかった地域だ。
2010年には、アピシット政権(当時)の打倒を掲げる「赤シャツ隊」が針金や竹、古タイヤなどでバリケードを築き、このエリアの通りを封鎖。政府軍が武力を行使してデモ隊の野営地を強制排除するまで、彼らの背後に輝くルイ・ヴィトンやバーバリーの看板は、「エリートvs.庶民」の階級闘争を象徴する格好のサインとして世界中に報じられた。
暴徒化したデモ隊にゴージャスな施設を台無しにされたくなかったら、ウォルドルフ=アストリアはパタヤの「ロイヤルクリフビーチーリゾート」にアドバイスを求めるといい。09年に赤シャツ隊の攻撃を受けた高級リゾートホテルだ。
記者は事件の数週間後に、同ホテルのマーケティング責任者ビクター・クリベンツォフと話をしたが、彼はまったく動じない様子で事件を笑い飛ばした。ホテルを守るためにはタイ海軍を呼びつけた、ブルネイ国王はマシンガンで武装した自国の警備隊に守られていた、そうすれば何も恐れることはない、と──。