グーグル独禁法疑惑に「あの企業」の影
反マイクロソフトの急先鋒の一人だったシュミット会長率いるグーグルが、かつてのマイクロソフトと同じ苦境に
包囲網 公聴会で証言するグーグルのシュミット会長(9月21日) Larry Downing-Reuters
グーグルに捜査のメスが入るよう、長年陰で働き掛けてきたマイクロソフトの苦労がようやく報われそうだ。
グーグルのエリック・シュミット会長が9月21日、米上院司法委員会の反トラスト小委員会の公聴会に出席し、グーグルはネット検索事業で自社に有利になるような操作はしていないと証言。しかしグーグルが一部の議員から徹底的に追及されて、ライバルのマイクロソフトが10年以上前に苦しんだような独占禁止法訴訟に巻き込まれることになるだろう、とみる向きが多い。
グーグルが恐れるべきなのは、独禁法に基づく調査を始めている米連邦取引委員会(FTC)に対して、上院が不利な報告をすることではない。FTCから提訴されることでもない。一番の問題は、捜査に長い年数がかかるため企業運営が停滞して、ライバルに後れを取ることだ。
この事態を誰より喜んでいるのはマイクロソフトだ。90年代、ライバル企業が政府に対してマイクロソフトを独禁法違反で取り締まるようロビー攻撃を仕掛けたおかげで、同社はまさにその運命をたどった。
疑いはすぐには晴れない
皮肉にも、当時の反マイクロソフト運動の急先鋒の1人が、サン・マイクロシステムズとノベルの取締役を務めたシュミットだった。シュミットらの抗議を受けて、司法省は98年にマイクロソフトを提訴。01年に和解が成立したが、同社が受けたダメージは計り知れない。
裁判沙汰で業務に集中できずに勢いを失い、企業イメージも低下。さらに悪いのは競争に対して弱気になったこと。つまり、マイクロソフトは敗者になった。
今のマイクロソフトは、ライバル企業に攻撃されたのと同じ方法でグーグルへの報復をもくろんでいる。マイクロソフトの元取締役の1人は、かつての仇敵シュミットが苦境に立たされた姿を見て思わずほくそ笑んだと話す。「グーグルは、独禁法違反の疑いは明確な説明と合理的な分析によってすぐに晴れると思っている。政治と権力の世界における駆け引きはそんなに甘いものではない、と彼らが気付くのはいつになることか」
グーグルの関係者によれば、マイクロソフトは反グーグルのロビー活動などに年間1500万ドルを費やしているという。多くの場合、その原動力となっているのは「感情的なしこり」だ。