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ヨーロッパEUの温暖化対策が貿易紛争の火種に
EU域内を離着陸しCO2を排出する航空機から課徴金を取れ——EUのそんな一方的な決定にアメリカや中国が猛反発
汚染者負担の原則 ETSの導入でEUの航空会社は年間で43億ドルの費用増になりそう Stefan Wermuth-Reuters
来年1月1日から、EU域内を離着陸する航空機が排出する二酸化炭素に対し、課徴金を課す──EUは先ごろそう発表した。多くの産業で05年から実施されている排出量取引制度(ETS)を航空業界にも広げる動きだ。
EUの行政執行機関である欧州委員会のコニー・ヘデゴーは、「汚染者負担の原則」を空にも適用すべきだと主張。「航空機利用者にも負担を求めなければ、一般市民からの協力は得られない」
航空業界はこれまで、ETSに組み込まれないよう抵抗してきた。EUの一方的なやり方には、各国からも批判が噴出。特にアメリカや中国、インド、ロシアは声高に異議を唱えている。
EUが国際社会の合意なしに課徴金を決めている点や、EU域内だけでなく飛行距離全体が対象となる点、課徴金が温暖化対策費ではなくEUの財源になる点などが批判を招いている。
米下院運輸委員会は、米航空会社がEUのETSに参加することを禁ずる法案を作成。アメリカの主権に対する干渉であり、温暖化対策に関する国際社会の合意形成を阻むと非難している。
一方、EUの航空各社は非EU国が不参加となれば、自分たちだけが負担を負わされて競争力が低下してしまうことを危惧している。
[2011年8月24日号掲載]