最新記事

欧州経済

今度はイタリアを襲った国家破綻の危機

国債利回りが急上昇し、緊縮策を主張して対立する財務相が脚光を浴びるなか、姿を消したベルルスコーニの真意は

2011年7月13日(水)18時41分
アレッサンドロ・スペチアーレ

すれ違い 破産寸前のベルルスコーニ(左)と尻拭いする立場のメルケル(1月、ベルリンでの首脳会談後) Fabrizio Bensch-Reuters

 イタリアのシルビオ・ベルルスコーニ首相はいったい今、どこにいるのだろう。7月11日、イタリア国債の保証コストが過去最高に上昇。ドイツ連邦債とイタリア国債の利回り格差が急拡大し、イタリアがヨーロッパにおける次の財政危機国家になる恐れが広がる中、この国の首相はいつになく静かに沈黙を決め込み、イタリア国民を戸惑わせている。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相も戸惑ったに違いない。事実、メルケルは11日の午後にベルルスコーニに電話し、金融市場からの信頼が厚いイタリアのジュリオ・トレモンティ経済・財務相が推進している緊縮財政法案を承認するよう説得しようとしたと、独政府は語っている。

 指図とも受け取れるメルケルのこの行動は、イタリアの世論を刺激した。政治との結びつきが強いこの国のメディアはこれまで、ベルルスコーニや政治家たちのスキャンダルを取り上げることばかりに熱を上げ、イタリアの財務状況についてほとんど報じてこなかったのに、今度ばかりは大騒ぎだ。

 だがメルケルからの呼びかけにもかかわらず、ベルルスコーニは姿を現そうとしない。「イタリアはギリシャ型の危機を回避する」と宣言して世界の投資家たちを安心させようとするつもりはないらしい。

 ベルルスコーニは、イタリアサッカーのセリエAで自らの保有するチーム、ACミランの初トレーニングを視察するはずだったが、予定をキャンセル。政府報道官によれば、「経済状況」に対処するために12日にはローマに戻ったという。

政争で見えない統一見解

 イタリアの経済指標に注目するにつけ、投資家たちは不安を募らせている。債務残高はGDPの120%近くにまで膨らみ、EU内ではギリシャに次いで多い。イタリアの債務は合計1兆8000億ユーロにも上り、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、アイルランドの債務を足したよりも多い。

 その上、イタリアの経済成長率はここ数カ月ほぼ横ばいで、他のヨーロッパの国々に遅れをとっている。失業率は上昇し、輸出主導の国にとっては致命的なことに、金融危機以前のピーク時に比べて輸出は13%減で推移している。

 これらはすべて目新しいことではない。だがユーロ圏を債務危機が襲い、ギリシャやポルトガル、アイルランドがデフォルト(債務不履行)に陥る危険性が高まってEUやIMF(国際通貨基金)から救済を受けるという事態に迫られる中、イタリアはこれまでどうにかして危機を回避してきた。

 ローマのルイス大学のマッシモ・スピスニ教授によれば、イタリアにとって救いだったのは金融市場での「評判が良かった」こと。「イタリアの問題点はよく知られているものの、これまでのところ、約束したことは守ってこられた」とスピスニは言う。

 だがそんな評判が様変わりしてしまう可能性もある。「ひとたび評判が傷つけば、名誉を回復するにはとても長い時間がかかる」とスピスニは指摘する。

 だからこそ今、政府が沈黙を続け、政治的対立が続いていることが、スピスニの不安をかき立てている。「イタリアは明確な統一見解を発信していない。今回私たちにとって必要なのは、アメリカがまさに今そうしているように、市場の一歩先を行き、市場に明確で力強いメッセージを送ることだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米人員削減、3月は60%急増 連邦職員解雇で=チャ

ワールド

訪米のロ特使、「関係改善阻む勢力存在」と指摘

ビジネス

イスラエルがシリア攻撃強化、暫定政権に警告 トルコ

ワールド

ハンガリー、ICC脱退を表明 ネタニヤフ氏訪問受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 7
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 8
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 9
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 10
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中