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欧州債務危機ポルトガルが支援要請に追い込まれた日
財政再建案の否決を引き金に信用不安がエスカレート、危機の連鎖はどこまで続く?
飛び火 ギリシャ、アイルランドに続き3カ国目(シャッターが目立つリスボンの通り) Jose Manuel Ribeiro-Reuters
4月6日、ポルトガル政府はついにリングにタオルを投げ入れた。ギリシャ、アイルランドに続いて、EU(欧州連合)に緊急金融支援を要請したのだ。
ポルトガルが財政破綻の崖っぷちに追い込まれたのは、市場での国債売りが加速したため。「外部への支援要請は最後の手段だとずっと思ってきたが、いま決断しなければ、この国が破綻のリスクにされされる」と、ジョセ・ソクラテス首相はテレビ演説で国民に訴えた。
破綻を回避するために必要な額の詳細は現時点ではわからないが、過去の試算に基づいて判断すれば、150億ユーロの緊急支援を含む総額750億ユーロ程度が注入される可能性が高い(ギリシャとアイルランドには計1950億ユーロが融資された)。
ブリュッセルのEU本部は以前から、ポルトガルからの要請があれば支援を行う用意があると表明してきた。「今回の要請に迅速に対処する」と、欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長は語った。
国際社会による支援と、その見返りとしてEUとIMF(国際通貨基金)が当然要求するであろう緊縮財政策に長い間抵抗してきたソクラテスが自力再建を断念せざるをえなかったのは、2日間に渡る市場の劇的な動向のせいだ。
きっかけは4月5日、格付け機関ムーディーズがポルトガル及び国内の多くの銀行や業界の格付けを引き下げたこと。国内の金融機関が国債の購入停止を表明するなか、政府は6日、記録的な高利回りで短期国債を発行して10億ユーロを調達する事態に追い込まれた。
「わが国の財政と金融システム、さらにその結果として経済にも甚大な脅威が迫っていた」と、ソクラテスは語った。「行動を起こさなければ、事態はさらに悪化すると確信している」
国際支援を受けなければポルトガルは債務不履行に陥るとの懸念を募らせていた市場は、今回の支援要請を受けて落ち着きを取り戻すとみられている。
膨らみ続ける財政赤字を抑えこむための財政再建策が3月23日に議会で否決されて以来、支援要請は避けられそうにない状態だった。否決を受けてソクラテスは首相辞任を表明したが、6月5日の総選挙まで暫定政権の首相職に留まることに合意。そのため、ソクラテスは今後も国際支援の条件をめぐって野党の協力を取り付ける必要がある。
「(野党の)無責任な行動によって、ポルトガルは市場で非常に厳しい立場に追い込まれた。本来なら避けられたこの厳しい状況を前にして、我々は現在の政治状況に合った形で利用可能な欧州の経済メカニズムに頼る必要がある」と、フェルナンド・テイシェイラ・ドスサントス財務相は6日に語った。
次の懸念は失業率20%のスペイン
EU当局は、ユーロ圏を吹き荒れる財政不安の波がポルトガルを最後に落ち着くよう祈っている。財政危機に陥ったギリシャとアイルランドに対する緊急融資を機に、ユーロの単一通貨圏構想の妥当性についても疑問の声が上がっていた。これを受けてEUは、他の加盟国が危機に陥った際に備えて「欧州金融安定基金」を設置し、5000億ユーロを拠出している。
次の懸念は、ポルトガルよりずっと財政規模の大きい隣国スペインに市場の関心が向かうこと。ポルトガルと比べればスペインの財政状況はずっと健全だとの認識がエコノミストの間に広がった結果、この数週間、スペインへのプレッシャーは弱まっている。
ただし、失業率は20%以上で、不動産バブルの崩壊後、国内の銀行の多くが不安定な経営状態に置かれたまま。危機の連鎖が止まらなければ、欧州のみならず世界経済にも大きな影響がありそうだ。
(GlobalPost.com特約)