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原油流出

暴落BP株は今が買い時か

2010年6月8日(火)17時41分
マシュー・フィリップス

BPを買収するならあの会社

 次に悪い点は、BPにとってメキシコ湾は命綱だということ。BPは1日45万バレルという、この地域で最大の原油と天然ガスの生産者だ。世界におけるBPの原油生産のうちメキシコ湾での生産量は11%を占め、利益でみればその割合はさらに大きい。

 バラク・オバマ米大統領がメキシコ湾における深さ約150メートル以上の海底油田開発を半年間凍結し、メキシコ湾で操業する採掘施設の安全対策規則を強化した今、事業費が跳ね上がるのは確実だ。

 さらに、BPがほかの企業と手を組めるかどうかも懸念される。石油大手が大きな採掘プロジェクトを単独で行なうことは稀だ。だが、今回の事故で安全対策に大きな問題を抱えていることがわかったBPと手を組むことは事故のリスクを背負い込むも同然で、企業イメージを大きく損ねることにもなる。その上BPは、刑事責任さえ問われかねない状態だ。

 BPの最終的な運命は、原油流出を止められるかどうかにかかっている。流出を食い止めることに成功すれば、おそらくBPは何とかこの嵐を乗り切り、買収を免れることもできるだろう。だが流出が続けば、独立した石油会社としてのBPの将来は真っ暗になる。 では、いったい誰がBPを買いたがるというのだろう。ノルウェーの原油アナリストによる最新の予想によれば、BPを買えるほどの大規模な企業はロイヤル・ダッチ・シェルだけ。それでも、どこまで膨れ上がるか分からないBPの負債を、背負い込もうという企業などあるのだろうか。

 そのリスクも含めて誰かがBPを買収するには、BPの価値は今よりずっと安くなる必要がある。株価37ドルなどという生ぬるい下がり方ではなく、真に「最悪の惨事」に見合った水準に。

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