最新記事

米金融

ゴールドマンを信じなかったウォール街

大幅増益でも投資家の関心は決算より証券詐欺疑惑に集中。ゴールドマンの釈明の中身は

2010年4月21日(水)16時41分
ナンシー・クック

激震 ゴールドマンの提訴を受けて4月16日のニューヨーク市場では株価が急落した Brendan McDermid-Reuters

 証券詐欺疑惑の渦中にある米金融大手ゴールドマン・サックスが4月20日、2010年1〜3月期の決算を発表した。純利益が前年同期比の約91%増という予想以上の増益だったが、米証券取引委員会(SEC)が同社を訴追した16日の衝撃を忘れさせてくれるほどのインパクトはない。

 ゴールドマンにかけられた疑惑は、サブプライムローン(信用度の低い個人向け住宅ローン)関連の資産を裏付けとした債務担保証券(CDO)の組成と販売に絡んで、投資家に重要な情報を伝えなかったというもの。20日の決算発表当日に行われた電話会見では、身内のはずのドイツ銀行やクレディ・スイスのアナリストたちまでが、訴追問題でゴールドマンを質問攻めにした(ちなみにゴールドマンは、この電話会見を一般の人々にも公開するという異例の行動に出た)。

 ゴールドマンの法務顧問グレッグ・パームは電話会見の前半を、自社の潔白を説明することに費やさなければならなかった。パームは、下落すると知りながら問題のCDOを組成する行為は同社にとって何のメリットもないと訴え、逆にこの取引で1億ドル以上の損失を被ったと主張した。

投資家も下落リスクは承知だったはず

 もっともパームが何より強調したかったのは、問題のアバカスという名のファンドに投資したのは証券業界の仕組みを熟知した機関投資家だという点だった。ウォール街の常識を知り尽くしている彼らは、住宅市場の下落に賭けている投資家や投資機関があることくらい承知していたはずだ、というのが彼の言い分。投資の世界では、相場の上昇に賭ける人がいれば必ず下落に賭ける人もいるのだから──。

 SECの訴追に関しては、実際に裁判で審理されるのか、和解に至るのか現時点ではわからない。パームは、提訴の知らせに非常に驚いたと何度も繰り返した。刑事罰に問われる心当たりがあるかという質問と、事前に司法省と協議したかという問いについては否定。他の容疑でも調査を受けているかという質問には回答しなかった。

 パームが明言したのは、「投資家にとって重要と思われる情報は開示する」ということだけ。逃げ道を確保した絶妙な表現だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザで報道車両に空爆、イスラエルは戦闘員標的と説明

ワールド

台湾総統府、中国との有事想定した初の机上演習

ワールド

イスラエル右派閣僚がアルアクサモスク訪問、ガザ人質

ワールド

BYDの外注先、ブラジルの「奴隷労働」否定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシアの都市カザンを自爆攻撃
  • 4
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 5
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 6
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 7
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 8
    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …
  • 9
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 10
    ウクライナ特殊作戦による「ロシア軍幹部の暗殺」に…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 9
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 10
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中