格付け会社を噴火口に落とせ
大幅な改革は不可能?
「(ムーディーズの)デリバティブ(金融派生商品)部門の担当者は金儲けに血眼だ」とコルチンスキーは記しているが、彼自身はムーディーズの破綻ではなく改革を願っている。
一方、別のムーディーズ元幹部シルバン・レインズは現状の評価についてはコルチンスキーと同意見だが、今後の見通しに関しては悲観的だ。「ムーディーズを生まれ変わらせるのは無理だ」
同じく元ムーディーズ幹部のジェローム・フォンズは、債券発行者が手数料を払うビジネスモデルから、投資家が格付け情報に料金を払うモデルに戻すことはほぼ不可能だと言う。「格付け会社の現在の利幅はS&P500社株価指数に採用されている企業のなかで屈指のレベルだ」と彼は言う。
だが大手格付け会社を守ってきた厚い壁にも亀裂が入り始めている。9月前半、ニューヨーク地裁のシーラ・シャインドリン判事はムーディーズとS&Pに対し、格付け情報をより幅広く公開しなければ、憲法修正第1条による完全な保護は受けられないとの判断を示した。
ウォーレン・バフェットら投資家は、格付け会社への出資から手を引き始めた。議会では、不適当な格付けを行った会社に法的責任を負わせるための法案が検討されている。
ニューヨーク大学のホワイトは、格付け会社の役割を縮小させるべきだと主張する。資金運用者や銀行家は今のような格付けに頼ることなく自らの判断で証券を購入すべきだというのだ。格付け会社は彼らにアドバイスを行うコンサルタントになればいい。
そうなれば監督当局の責任は増し、金融機関の資産内容に今より厳しく目を光らせる必要が出てくる。一方、「銀行は自らが保有する債券の安全性を監督当局に証明しなければならなくなる」とホワイトは言う。
だがそうした改革を実現するには、大ナタを振るう必要がある。真っ先に取り組むべき仕事は、格付け業界の巨大企業に引導を渡すことかもしれない。
ムーディーズ元幹部のレインズは言う。「ムーディーズはアーサー・アンダーセンと同じ道を歩むべきだ」
[2009年10月21日号掲載]