サプリ業界が不況期に伸びる3つの理由
小売り業の苦戦が続くなかでサプリメントが売れまくっている背景には、「あの問題」もありそうだ
意外な勝ち組 アメリカのサプリメント業界は不景気を追い風に急成長している
10月29日、米政府は第3四半期のGDP(国内総生産)速報値を発表し、経済が急速に回復していると宣言した。となると、いよいよ勝ち組が誰かを見極めるタイミングだ。
私はこの数カ月間、マクドナルドや銃器メーカーのフリーダム・グループのように不況のなかで見事な成功を収める企業に注目してきた。同じように、不景気の時代にぴったりのビジネスモデルで成功を収めた業種がもうひとつある。ビタミン剤やサプリメントを取り扱う企業だ。
新規株式公開(IPO)の市場を見ると、旬のビジネスが何かよくわかる。不況に突入して以来、小売業はずっと冷え込んできた。ウォールストリート・ジャーナル紙のリン・コワンによれば、小売業で上場を果たしたのは2年近く前のランバー・リクイデーターズが最後。だが、そんな冬の時代は先週で終わった。
変化の急先鋒は、サプリメント販売のチェーン店であるビタミン・ショップ。1970年代にニューヨークにオープンさせた一店舗からスタートし、今では434店舗をもつ同社は、7月にIPOを申請。10月27日に上場を果たし、1億5000万ドルを集めた。
医療保険に入れないからサプリを飲む?
ビタミンやミネラルをはじめとするサプリメント市場は250億ドル。この業界は、3つの点で昨今の経済危機の恩恵をこうむっている。
まず、社会学者のリチャード・フロリダが「大きなリセット」と呼ぶように、一部のアメリカ人の間で健康ブームが高まっていること。彼らは体に悪い習慣や金のかかる食生活を改め、タバコや炭酸飲料を減らし、スターバックスやコンビニエンスストアで高カロリーのおやつを買うのを控えている。ビタミン剤やサプリメントは、健康なライフスタイルに欠かせない要素だ。
2つ目の要因は、医療保険に入れないアメリカ人が増えていること。彼らは処方薬や医療行為に多額の支払いを迫られるリスクをかかえており、サプリメントで穴埋めしようとしているのかもしれない。大手小売チェーンのウォルマートやウォルグリーンでも、サプリメントの売れ行きは好調だ。
さらに、史上最強の消費勢力であるベビーブーマー世代も、サプリメント業界の快進撃を後押ししている。もともとナルシスト的な傾向がある彼らは、高齢化するにつれて今まで以上に健康に執着している。
60年代のマリファナブームや70年代のディスコブームを起こしたのと同じように、彼らはいまサプリメントの売上アップを牽引している(ある高齢のベビーブーマーの知人の手元には常に錠剤が並んでおり、私は彼を訪ねるたびにサプリメントチェーンのGNCに押し入ったのかと質問するほどだ)。
ニュートリション・ビジネス・ジャーナル誌によれば、サプリメントの売上は2001~08年にかけて年4.9%のペースで増えた。「業界を引っ張る重要な要素の一つは、ベビーブーマー世代を含む50歳以上の人々の存在だ。彼らはより健康な自分を求めて病気の治療や予防に努めている」と、ビタミン・ショップのパンフレットにも書かれている。