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ノースウエスト航空空白の78分間、あきれた言い訳
10月21日、カリフォルニア州サンディエゴからミネソタ州ミネアポリスに向かっていたノースウエスト航空188便が、78分間も管制官との交信を絶った上に着陸予定の空港を240キロ通り過ぎるという騒ぎがあった。
情報筋によると、188便はカンザス州西部の高度約1万1000キロ上空を航行中に突然、管制官との交信をしなくなったという。その後ミネソタ州の東隣にあるウィスコンシン州に入るまで操縦士からの応答はなかった。
この間、管制官は必死に188便に呼び掛け、テキストメッセージを送り、航空会社の専用回線を通じて交信を試みた。連邦航空局は9・11テロの教訓から米軍に連絡を取り、戦闘機が待機する事態に発展したとの情報もある。
交信再開後、何が起きたのかという管制官の問いに対し、操縦士から返ってきたのは「気が散っていた」という答え。さらに厳しく問いただしたところ、操縦士は「会社の問題について議論していた。それ以上は言えない」と答えたという。
ハイジャックかと思ったら
管制側はハイジャックの可能性も考え、通常は行う必要のない方向転換を何度も指示。操縦士が何のためらいもなく従ったため、事件性はないと結論、ミネアポリスの空港への着陸を指示した。
事件の調査を開始した米運輸安全委員会(NTSB)は「会社の問題」を議論していたという操縦士の説明に納得していない。そんなことのために管制との交信という重要な業務を1時間以上放り出すとは信じ難いからだ。
NTSBの調査官は当初、この間のコックピット内の会話をボイスレコーダーが録音しているものと期待していた。だが、188便に搭載されていたボイスレコーダーは最長で30分間しか録音できないものだった(ボイスレコーダーと航行データを記録するフライトレコーダーはワシントンのNTSBの研究所に送られ、分析が行われている)。
専門家の間でささやかれているのは、正副操縦士が共に居眠りをしてしまったのではという説だ。ボイスレコーダーに残された居眠りの証拠を消すために、しばらく飛行を続けたというわけだ。
ノースウエスト航空の親会社のデルタ航空は、188便の操縦士を「調査が終了するまで飛行業務から外す」と発表している。
[2009年11月 4日号掲載]