最新記事

金融

銀行危機に効く魔法のプラン

官民共同ファンドや新「バッドバンク」構想は有毒資産処理に有効か

2009年4月7日(火)15時07分
ジョナサン・オルター(本誌コラムニスト)

 古い歌にあるように、骨はみんなつながっている。太ももの骨はひざの骨に、ひざの骨は脚の骨に、脚の骨は......という具合だ。今回の経済危機も、すべての原因は銀行業界の苦境とつながっている。

 銀行は目のかたきにされても仕方がない。それでも銀行が必要なことはまちがいない。メガバンクがかかえる巨額の不良資産を処理する方法を考え出さないと、金融のパイプが詰まったままで、貸し渋りが続く。このままでは私たちがキャットフードしか食べられなくなるのも時間の問題だろう。

 だからといって、バラク・オバマ大統領は銀行問題だけに専念しろということにはならない。そんなことを言うのは、今回の危機を予想できなかった愚か者たちにほかならない。一日中クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)について議論している暇はない。

 いい大統領は一度に複数の仕事をこなし、就任当初から幅広い問題に取り組むものだ。とはいえ、著名な投資家ウォーレン・バフェットの言うとおり、オバマは銀行の問題について態度をより明確にする必要がある。

 そこで金融の複雑な世界をのぞいてみよう。ある程度の常識があれば、さまざまな解決策の迷路を通り抜けられるはずだ。さもないと、ウォール街の住人たちに重要な決定をすべて任せる羽目になる。

 オバマは3月12日、主要企業の経営者と会談し、金融機関の資産査定終了後に「バランスシート(貸借対照表)の健全化を支援する」と語った。いい考えだ。それが景気回復の頼みの綱だという点で、ほぼ異論はないだろう。

 だが具体的な中身はまだわからない。2月に発表された金融安定化策は漠然としすぎていた。ティモシー・ガイトナー財務長官は近く新たな案を発表するという。その前に、考えられる選択肢を検討してみよう。

 今の銀行危機に取り組むうえで選択肢は四つある。うち二つはうまくいきそうにない。第一の選択肢は、銀行株が最近上向いていることを喜んで、何もしないこと(シティグループの株価がやっとATMの手数料を上回った!)。市場の自然治癒力に任せる方法はハーバート・フーバー大統領が大恐慌のときに試したが、あまり賢明な策とはいえない。

 第二の選択肢は銀行の国有化。真の国有化とは永久に政府が所有することで、そんな考えを好むのはひと握りの年老いた社会主義者くらいだろう。状況が深刻になれば、一時的に政府の管理下に置く可能性はあるが、それを「国有化」といえば議論の対立をあおるだけだ。「国有化」は禁句にしよう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中