最新記事

バイオ燃料より有望、液化石炭の未来

エネルギー新時代

液化石炭からトリウム原発まで「ポスト原発」の世界を変える技術

2011.08.03

ニューストピックス

バイオ燃料より有望、液化石炭の未来

技術の向上でコスト面のハンディが解消された液化石炭が、クリーンな代替燃料として中国やアメリカで注目

2011年8月3日(水)10時50分
エミリー・フリンベンカット

未来を担う 中国・内モンゴル自治区オルドスに建設されるCTL工場(08年) Nao Nakanishi-Reuters

 石炭を車の燃料に使えば、真っ黒な排ガスで空気が汚れそうだ。しかし、そんな「汚い鉱物」も液状になると話は別。専門家の予測が正しければ、液化石炭はガソリンに代わる燃料として、20年以内に世界各地で利用されるようになる。

 液化石炭は自動車や列車だけでなくジェット機の燃料にもなる。しかも環境にやさしく経済的なうえ、多くの地域で簡単に手に入ると、推進派は言う。

 液化石炭は目新しいものではない。1920年代にドイツで開発され、ナチスの軍用車両に利用されていた。しかし最近まで、石炭液化(CTL)技術はコストが高すぎた。03年までの20年間、原油価格は平均1バレル=25ドルにとどまっており、1バレル=45ドルの液化石炭の出番はなかった。

 しかしその後、原油価格が高騰し、人々の環境意識も高まるなか、液化石炭は「正しい選択肢」として見直されつつある。エネルギー安全保障の面で有益で、地球温暖化対策にも威力を発揮するとみられている。「CTLは今後、経済と環境の両面で社会に貢献する技術になりうる」と、コンサルティング会社グローバル・インサイトのスティーブン・ネルは言う。

中国で複数のプロジェクトが進行

 最近では、世界中で何十億ドルもの液化石炭が取引されている。世界全体の生産量は今のところ日量15万バレルだが、2020年には60万バレル、30年には180万バレルに増える見込みだ。

 中国では液化石炭開発に250億ドルが投じられている。CTL技術で世界をリードする南アフリカの化学・燃料会社サソールは、中国の寧夏回族自治区と陜西省にそれぞれ60億ドルをかけてCTL工場を建設中。中国の国営石炭会社、神華集団は07年に中国初のCTL工場を稼働させる予定で、既に75億ドルを投資している。

 一方、アメリカでは少なくとも9州が液化石炭の生産を検討中。イリノイ州とケンタッキー州では、州議会にCTL工場誘致法案を提出する動きがある。モンタナ州のブライアン・シュワイツァー知事は06年10月、13億ドルをかけてアメリカ初のCTL工場を建設すると表明。知事の顧問エリック・スターンは「アメリカの運輸燃料をすべてCTLでまかなえる日が来るかもしれない」と話す。

 南アフリカは液化石炭利用のパイオニアだ。アパルトヘイト時代に経済制裁で石油の輸入が制限されたため、CTLインフラの整備が進んだ。サソールは南アで消費される輸送燃料の30%を供給している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

製造業PMI11月は49.0に低下、サービス業は2

ワールド

シンガポールGDP、第3四半期は前年比5.4%増に

ビジネス

中国百度、7─9月期の売上高3%減 広告収入振るわ

ワールド

ロシア発射ミサイルは新型中距離弾道弾、初の実戦使用
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中