最新記事

ナイスガイに首相が務まるか

ウラ読み国際情勢ゼミ

本誌特集「国際情勢『超』入門」が
さらによくわかる基礎知識

2010.04.19

ニューストピックス

ナイスガイに首相が務まるか

高い人気を誇る保守党党首デービッド・キャメロンが経済危機で「資質」問題に直面

2010年4月19日(月)12時06分
ストライカー・マグワイヤー(ロンドン支局長)、デービッド・メルリンジョーンズ

 イギリスのゴードン・ブラウン首相は今月初めにアメリカを訪れ、上下両院の合同会議で自信たっぷり、見事な演説を行った。実に見事で、とても「事実上は過去の人」には見えなかった。

 しかしイギリスの世論は、すでにブラウンに引導を渡したようだ。各種調査でも専門家の観測でも、来年6月までに実施される総選挙では野党・保守党による政権奪還の可能性が高い。

 保守党には朗報だろうが、若き党首デービッド・キャメロン(42)には試練の時だ。彼には今まで以上に厳しい目が向けられる。もはや単なる野党党首ではなく「次期首相」なのだから。この若者に任せれば、果たして未曾有の経済危機を乗り切れるのだろうか。

 今のところは追い風が吹いている。各種の世論調査で、保守党は常に10〜20%のリードを保っている。しかし、具体的な政策が見えないという声は党内にもある。

 キャメロンは党首になってから3年ちょっと、下院議員としてのキャリアは8年にも満たない。確かに人気は抜群だが、何を考えているかはよく見えない。保守党のホームページには膨大な政策文書が載っているが、どれがキャメロンの考えなのか。

 昨年夏までは、政権獲得の道は平坦と思われていた。10年以上も続いた労働党政権には国民も飽きている。現職のブラウンは前任者トニー・ブレアのような輝きがないし、選挙の洗礼も受けていない。これなら保守党の楽勝だ......。

 しかし昨年9月以降の世界的な金融危機で状況は一変した。イギリス経済に対する国民の不安が恐怖に変わるなかで、キャメロンは態度を明確にできなかった。政府による金融機関の救済案に対しても迷いを見せた。

 そのせいで、ブラウン首相(自他ともに認める財政のプロだ)からは「何もしない保守党」と批判された。かつてブラウンを「優柔不断」と非難していたキャメロンに、同じ烙印が押された。

 しかし金融危機が深刻化してブラウンの危機管理能力が疑問視されるなか、キャメロン陣営は徐々にだが失地回復へと動きはじめた。学者肌で退屈なブラウンに対抗して、キャメロン率いる保守党は「真剣さ」と「経験」を前面に押し出そうとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、ウクライナ・ミコライウ州のエネインフラ攻撃

ワールド

リトアニアで貨物機墜落、搭乗員1人が死亡 空港付近

ワールド

韓国とマレーシア、重要鉱物と防衛で協力強化へ FT

ワールド

韓国サムスンのトップに禁固5年求刑、子会社合併巡る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中