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アメリカがめざす日本の「最前線」化

在日米軍の真実

海兵隊の密着取材で見た
オキナワ駐留米兵の知られざる素顔

2010.03.31

ニューストピックス

アメリカがめざす日本の「最前線」化

アメリカの安保政策で重要性を増す日本の存在。同盟関係強化のねらいは自衛隊の軍隊化か

2010年3月31日(水)12時01分
ジョン・バリー(本誌軍事問題担当)

 ジョージ・W・ブッシュ大統領が誕生した01年以来、米政府は世界規模の米軍再編に取り組んでいる。冷戦時代の「駐留軍」から、効率的な「遠征軍」に様変わりさせるのが目的だ。これまでは旧ソ連圏を囲むように大規模な基地を配備してきたが、今後は、米国内の基地から全世界に即応できるよう航空、海上輸送の態勢を整える。

 在外基地の3分の1は閉鎖される。残りの基地も小さな市ほどもある規模を縮小し、地域の部隊が補給に立ち寄る程度にまで簡素化する。全体で約7万人の在外兵士と10万人の家族は、アメリカに帰国する。これが再編計画の大筋だ。

 ブッシュは03年末、今後は同盟国との協議に入ると語った。だが、ドナルド・ラムズフェルド国防長官が連邦議会にようやく正式な説明をしたのは、昨年9月。しかも概要だけしか明らかにしなかった。

 議会は昨夏、政府の計画を検証する超党派の「海外基地見直し委員会」を設置。退役軍人が中心メンバーのこの委員会は今年5月までに、詳細な報告書を議会に提出する準備を整えた。機密情報が含まれているとして国防総省が公表を禁じたこの報告書は再編の最終案ではない。だが環太平洋地域の米軍展開をラムズフェルドがどう考えているのかは、うかがえる。

米韓関係は修復不能?

 本誌が独自に入手したこの報告書によると、環太平洋地域で進行中もしくは計画中の米軍再編は、四つの判断に基づいている。

 第一に、今後の中国の台頭は、環太平洋地域の安定を脅かす最大の脅威である。

 第二に、日本との同盟関係は不可欠なばかりか、中国がその力を誇示するにつけますます重要になっている。基地の地元住民(とくに沖縄)の感情を逆なでしないよう、コストがかかって軍事的にも疑問のある「調整」作業にも、積極的に取り組んでいく。

 第三に、韓国との同盟関係は弱まりつつある。複数の米政府高官は個人的見解として、米韓関係はもう修復不可能かもしれないとみる。再編計画では、朝鮮半島の新施設の建設で韓国政府に多額の負担を強いる。それを受け入れるかどうかが、韓国の真意を確かめる試金石になるという見方もある。

 第四に、今後の紛争では米空軍が決定的な役割を担うため、アジア大陸にできるだけ近い米領土に最新鋭の攻撃拠点を建設する必要がある。グアムのアンダーセン空軍基地を近代化するほか、大西洋の航空母艦1隻をハワイのパールハーバーの前方配備に移す。

 基本的には、在日米軍の再編計画もこれらの基本方針に沿って行われる。現在の在日米軍は、兵士4万7000人、国防総省の民間人職員5500人、家族5万2000人、現地雇用2万3500人。今後は海兵隊を減らして陸軍を増強する計画があり、全体の数はむしろ減るだろう。

太平洋の「不測の事態」

 現在、日本に駐留する米陸軍は2000人以下で、そのうち戦闘部隊は特殊部隊のみ。だが再編計画では、陸軍第1軍団の司令部を、米北西海岸のワシントン州から神奈川県のキャンプ座間に移転させるという構想もある。

 第1軍団は、太平洋地域の不測の事態に即応する役目をもつ。それを日本に移すことは、日米相互の「軍隊」の連携が、かつてないほど強化されることを意味する。

 アメリカは、この考えに沿って日本が自衛隊を正式な軍隊に昇格させ、実態に合わせて名称も「陸軍」「海軍」「空軍」に変更することを期待している。

 国防総省は、座間を完全な司令本部にして大将に指揮をとらせる構想をもっていたようだが、さすがに時期尚早だろう。太平洋地域の米陸軍の作戦司令本部は、ハワイになる公算が高い。

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