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激減ウミガメは保護では救えない
産卵地を手厚く守っても個体数の減少が止まらないのはなぜか
ウミガメは野生の爬虫類のなかでもとくに人間に愛され、大切に扱われている。外見は醜いが、産卵時の不屈の姿が人の心を打つ。
何億年も前から、ウミガメは海から砂浜にはい上がって卵を産んできた。ドキュメンタリー番組で紹介されたり、海洋生物学者がその行動を追跡したり、自然保護ボランティアが卵からかえったばかりのカメを水際まで手で運んでやったりする、そのずっと前からだ。
主要な産卵地であるノースカロライナ州からフロリダ州にかけての大西洋沿岸では、米政府によって厳重な保護策が取られている。これだけ手厚く守ってあげているのだから、ウミガメも人間への感謝の気持ちを込めて、絶滅の危機から逃れてくれてもよさそうなものだ。
だが、自然は人間の思いどおりにはならない。米魚類野生生物局が昨年発表した報告書によれば、北大西洋に生息する6種類のウミガメのうち、数種の個体数が大幅に減っている。とくに最大で体重180キロ程度まで成長するアカウミガメが危ない。
環境保護団体オセアナの海洋生物学者エリザベス・グリフィンによると、最大のウミガメ産卵地であるフロリダ州南部の個体数は過去10年間で半減したという。
成長後に海で過ごす期間が危ない
このためオセアナは米政府に対し、北大西洋のアカウミガメの保護レベルを「絶滅のおそれ」から「絶滅危機」に引き上げるよう求めた。保護措置を追加しなければ絶滅してしまう状態を意味する。これとは別に米政府は07年11月、太平洋側に生息するアカウミガメを「絶滅危機」種に指定することを検討していると発表した。
いったいどうすればウミガメを絶滅から救えるのだろうか。グリフィンによれば、陸上で過ごす数週間(産卵期のメスと卵、子ガメ)は十分に保護されている。問題は海で過ごす何年もの期間だ。
「脅威になるのは漁業だ」と、グリフィンは言う。大きな網で海底をさらう底引き網漁や、釣り針がついた縄を数キロにもわたって延ばすはえ縄漁が、ウミガメを大量に捕獲してしまう。オセアナは、こうした「混獲」に関する厳しい規制と、大西洋沿岸の保護水域の設定や拡大を求めている。
ウミガメが危機に瀕している背景には、他の環境問題と同様、地球温暖化と自然環境の破壊がある。産卵場所である狭い砂浜は、海岸の開発と海水面の上昇によってさらに狭められている。
これらの問題にも対処しなければ、恐竜より長生きしてきたウミガメは絶滅するだろう。そのとき私たちの子孫は、これほど醜い生物がなぜこれほど愛されたのかを知りたいと思うにちがいない。
[2008年3月26日号掲載]