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2010.01.21

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村上春樹(1949-)

「勝者も敗者もいない戦争になるだろう」

2010年1月21日(木)12時06分

[2001年10月10日号の掲載記事を2006年2月1日号にて再録]

 地下鉄サリン事件を検証したノンフィクション『アンダーグラウンド』の著者・村上春樹が、9.11後に本誌グレゴリー・ビールズのインタビューに応じた。無差別テロに世界がどう反応するかという村上の洞察は的中し、テロとの戦いは今も泥沼の様相が続く。

----あなたは、世界はカオス状態にあると言った。今回のテロはそのカオスにどんな影響を与えたのか。

 今の世界がどれほど危険になりうるか、人々はわかっている。多くの人が、飛行機がビルに激突する映像を目にした。それは現実であると同時に、私たちがおかれている、いわば緩やかなカオスのメタファーでもあった。緩やかなというのは、それとともに生きていかなければならないからだ。しかし、それはいつでも激しいものに変化しうる。

----サリン事件は、日本をどう変えたのか。

 事件の前は、人々は楽観的だったと思う。働けば豊かになれると信じていた。それが突然、そうでないことに気づいた。

----同じことがアメリカでも起きると思うか。

 アメリカにとっては、1つの転換点になる。今回はまったく新しいタイプの戦争だ。勝者も敗者もいない戦争になるだろう。アメリカ人はそうした戦争に慣れていない。

----今回の悲劇をより深く理解するために、アメリカ人が行うべきことは?

 何が善で誰が悪か理解しているとアメリカ人は信じていた。だが、物事はもはやそう単純ではない。

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