最新記事

アフガニスタンに米軍3万人増派決定

本誌が選ぶ10大ニュース

イラン、インフル、ノーベル賞・・・
2009年最もお騒がせだったのは?

2009.12.22

ニューストピックス

アフガニスタンに米軍3万人増派決定

現地駐留米軍司令官による「4万人増派論」が公になるなか、決断を迫られていたオバマ大統領は12月1日、3万人の増派を発表した

2009年12月22日(火)12時02分
ジョン・バリー(ワシントン支局)


素人オバマ、ついに迷走す

増派するのか、しないのか──オバマを待つ泥沼化の悪夢


 オバマ政権はアフガニスタン政策をめぐり、アマチュアぶりを露呈し続けている。

 アフガニスタン駐留米軍のスタンリー・マクリスタル司令官は8月末、現地の戦況に関する非公開の評価報告書を提出。だがこの報告書がワシントン・ポスト紙にリークされ、追加の増派がなければ任務失敗の可能性があるとの指摘が明らかになってしまった。

 おかげでバラク・オバマ米大統領は外交政策上、最大の難問に直面している。それだけではない。オバマの政策決定そのものが、難題を抱え込むことになった。

 リーク騒動の中心にあるのは2つの疑問だ。第1に、報告書を漏洩したのは誰か。これは興味深い問いだが、重要とはいえない。第2に、オバマを混乱に陥れた責任は誰にあるのか。これは大きな意味を持つ問い掛けだ。

 オバマ政権は混乱など起きていないと取り繕うのに必死だ。ヒラリー・クリントン国務長官はニュース番組で、政権はマクリスタル報告書への反対意見にも耳を傾けているとの苦しい主張を行った。

 つまりオバマ政権では、上院に指名承認されたアフガニスタン駐留米軍司令官が提出した報告書、彼が特別に結成した国際的な専門家チームが草案を作成したこの報告書を、どこかのシンクタンクの誰かに修正させることが許されるということか?

 オバマ政権に不安を感じるのは、その答えが「イエス」である可能性があるからだ。

 08年の大統領選期間中、オバマはアフガニスタン問題を重視する安全保障政策を主張した。アメリカはアフガニスタンでの戦争に勝利しなければならないが、ブッシュ政権は必要な資源を投入してこなかった、と。

 大統領就任後、オバマはアフガニスタン戦略の再考を命令。3月27日に「慎重な政策見直し」の成果である新戦略を発表した。

 とはいえこの戦略は、前政権が設定した目標をそのまま受け継いでいた。武装勢力の掃討やアルカイダの拠点再建の防止、治安権限移譲を目指したアフガニスタン軍の訓練、国際社会の支援拡大だ。

 新しい目標も付け加えた。「パキスタンの文民統制や合法的で安定した政府、活発な経済を強化する取り組みを支援する」こと。言い換えればパキスタンの安定化だ。

 これらの極めて野心的な目標を達成するため、オバマは2月にアフガニスタン駐留米軍の1万7000人増派を指示。アフガニスタン軍訓練のため、さらに4000人の増派も決めた。

 問題は、オバマが計2万1000人の増派で十分だと考えていたのか、だとしたら誰がそんなことを進言したのか。または本当に必要な数の増派を行うという厳しい決断を避けていたのかという点だ。

 オバマの戦略は、前政権が08年後半になって実施したいわゆる対反政府武装勢力(COIN)作戦に倣っている。目的はタリバンなどの攻撃から市民を保護して世論を政府支持へ導き、武装勢力メンバーの引き渡しに積極的な風潮をつくることだ。

 COIN作戦の妥当性については米軍内部でも意見が分かれるところだが、この作戦にはさらなる大規模増派が必要だということは明らかだった。オバマは当初からこれを理解していたのだろうか。

司令官が突き付けたノー

 09年初頭の時点で既に、アフガニスタン駐留米軍のデービッド・マキャナン司令官(当時)は2万7000人の増派を要請していた。政権は5月、新戦略には新司令官が必要だとしてマキャナンの更迭を発表。マクリスタルを後任に充てた。

 そのマクリスタルが今、オバマの戦略を遂行するにはさらに4万5000人の増派が必要だと言い始めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中