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ダニエル・ルベツキー(アメリカ/平和創造)
異教徒が一緒につくるスパイス
対立する民族や国家の橋渡し役になることは、ホロコースト(ナチスのユダヤ人大虐殺)生存者の子供であるダニエル・ルベツキー(39)にとって、子供時代からの夢だった。その思いは、大学在学中や卒業後に中東や日本などで暮らした経験を通じて、ますます強まった。
さまざまな人種や宗派の人と共同で加工食品や調味料を生産するピースワークス社を設立したのは94年。「(理念は)市場の力で懸け橋をつくること」だと、ルベツキーは言う。「一緒にビジネスをすることによって、信頼関係を築き、お互いの人間性に触れていく」
しかし、まだめざましい成果をあげているとは言いがたい。これまでに成功したプロジェクトは、インドネシアのヒンドゥー教徒とイスラム教徒と仏教徒が一緒につくるスパイス、アラブ人とユダヤ人が共同でつくるペーストなど、3件だけ。ビジネスを社会貢献の理念と結びつけようという試みは、「いつも多くの緊張を生み出してきた」と、ルベツキーは言う。
それでも、最新の4つ目の商品であるヘルシー志向のスナックバー「カインド」は、アメリカやドバイ、イギリス、メキシコなどで好調な売り上げを記録している。利益の5%は系列の財団に寄付されて、中東で民族の平和的共存を後押しするために用いられる。
この成功に勇気を得て、ルベツキーは自分たちの活動がいつか実を結ぶと信じている。平和を築くには時間がかかって当然なのだ。
[2007年7月18日号掲載]