最新記事

ジェイミー・オリバー(イギリス/職業訓練)

社会起業家パワー!

社会貢献しながら利益も上げる
新世代のビジネスリーダーたち

2009.10.13

ニューストピックス

ジェイミー・オリバー(イギリス/職業訓練)

グルメで社会復帰支援のセレブシェフ

2009年10月13日(火)11時33分
ウィリアム・アンダーヒル

 31歳のイギリスのセレブシェフ、ジェイミー・オリバーは今、自伝を執筆している。伝えられる原稿料は250万ポンド(約6億円)。パブ経営者の息子で、料理学校卒業という以外に取りたてて資格もない彼にとっては、なかなかの金額だ。

 だが彼の幸運をねたむ人などいない。オリバーは才能あふれるシェフ出身のテレビスター。ジャンクフードで育ったイギリスの子供たちに健康的な食習慣を紹介し、ドロップアウトした子供にシェフ教育を行うことで高い評価を得た。

 オリバーの食育への挑戦は2年前に始まった。彼は自身のテレビ番組『ジェイミー・オリバーの給食革命!』で、イギリスの深刻な給食事情を紹介。栄養価が高く野菜をふんだんに使った給食を呼びかけた。番組に触発されたイギリス政府は、改善のため2億2000万ポンドの予算を組んだ。

 最近ではさらなる使命感に燃え、「世界的な社会起業ブランド」の設立を口にしている。ホームレスや元麻薬使用者の若者に職業訓練を提供することで、希望と自尊心を取り戻させるのがねらいだ。

 オリバーは自身を振り返り、こう語る。「私は特別な人間じゃなかった。だからこそ、父に教えられた意志の力や情熱、実行力を武器にしてきた。このことを人々に伝えていきたい」

見習いシェフが料理する名店

 実際、オリバーは自身の「フィフティーン基金」が運営するレストランチェーンで職場訓練を提供している。「フィフティーン」の1号店は5年前、ロンドンで誕生(当然、訓練生選考のもようもテレビシリーズで放映された)。後にイングランド西部、アムステルダム、メルボルンにも出店した。

 店のメニューは地中海料理の要素を取り入れた品々。味はトップクラスで批評家から高い評価を受けているが、値段も高い(利益は基金に還元)。調理のほとんどは、見習いシェフがプロの指導を受けながら行っている。オリバー自身もときどき厨房で指導する。

 訓練生の給料は安いが競争率は高い。ロンドン店では毎年20人の募集に100人以上の希望者が集まり、適性や熱意を厳しく審査され、ふるい落とされる。

 だがその見返りは大きい。卒業生の何人かは有名店のシェフとして働いたり、ケータリングビジネスを展開するなどして活躍している。社会起業家の「投資」の成果としては申し分ないだろう。

[2007年7月18日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中