最新記事

「ウイグル族は過激派ではない」

ポスト胡錦濤の中国

建国60周年を迎えた13億国家
迫る「胡錦濤後」を読む

2009.09.29

ニューストピックス

「ウイグル族は過激派ではない」

亡命者の代表カーディルが語るウイグル騒乱の「真実」

2009年9月29日(火)13時04分

 中国政府は、新疆ウイグル自治区の区都ウルムチでの暴動をあおったとしてウイグル族人権活動家ラビヤ・カーディルを非難している。カーディルは05年3月に中国の刑務所から釈放された直後にアメリカに亡命。今はワシントン近郊に住み、亡命者組織「世界ウイグル会議」の議長を務める。メリンダ・リウ北京支局長が話を聞いた。

――中国政府は、あなたが電話で支持者を集め、暴動を扇動したと非難しているが。

 ぬれぎぬだ。7月4日に私の娘たちがウイグル関連のインターネット・サイトをチェックして、翌日ウルムチで抗議運動が起きそうだと教えてくれた。私の家族は中国政府から目の敵にされ、息子2人が獄中にいる。心配になり、自宅でほぼ軟禁状態にある弟に電話し、明日は外出しないよう親類にも伝えてくれと言った。政府はその会話を録音していたようだ。

――あなたは99年に国家機密漏洩の容疑で逮捕されたが、その「機密」には自治区で発行された新聞記事も含まれていたという話は、本当か。

 本当だ。新聞には、ウイグル族の逮捕・処刑者数を書いた記事や、ウイグル族を「厳しく取り締まる」べきだという政府指導者の演説が載っていた。どこでも手に入る記事を(外国にいた)夫に送っただけだ。

――5年以上投獄されたが、拷問は受けたのか。

 精神的に拷問された。漢族の看守が私の目の前でウイグル族を拷問したのだ。看守は若い女性たちを裸にして殴り、若い男性2人も拷問した。口にできないくらい残忍だった。(涙を拭いながら)思い出したくない。彼らは死んだに違いない。1人は特にズボンの前がひどく出血していた。

――ウルムチの暴動は広東省の玩具工場での事件が引き金になったといわれる。漢族の従業員がウイグル族の寮を襲い、2人が死亡した。逮捕の発表が遅く、自治区内のウイグル族が激怒した。事件を聞いてどう思ったか。

 とても驚いた。当局は殺人事件に関わった者を逮捕しようとしなかった。ウイグル族が殺されたり殴られても政府は気にしないらしい。

――あなたは中国で最も裕福な女性だったと自称している。何千万謖相当の企業帝国のオーナーとして、商社やデパートを所有していた。なぜ政府の政策を批判するようになったのか。

 中国の統治下ではウイグル族は貧しく、民族のアイデンティティーが攻撃されるのを目にしてきた。最初は政府が主張するようにウイグル族は怠惰だと思っていたが、自分が裕福になるにつれ、政府がウイグル族の教育レベルを引き下げる政策を取っているのだと気付いた。

――新疆の危機的状況について米政府に望むことは?

 ウルムチに領事館を設置してくれれば素晴らしい。そうすれば直接現地を監視することができ、政府が簡単に弾圧できなくなる。国際社会が介入してくれないと、国民は政治的に洗脳されているため、民族間で大規模な衝突が起きる恐れがある。

――暴力を使わないよう同胞に呼び掛けたが、反応は?

 効果はある。問題は治安部隊ではなく漢族の一般人がウイグル族を攻撃していることだ。

――欧米のウイグル族に対する最大の誤解は何だろうか。

 私たちのイスラム教への信仰だ。中国政府は、私たちがテロリストで民族分離主義者でイスラム過激派だというプロパガンダを流し続けている。

[2009年7月22日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中