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バーナンキ「若い芽」発言
FRB議長が景気回復の兆しに言及。「若い芽」という言葉自体は流行し花開いたが、経済の本格回復はいつになるのか
春は再生の時。だから3月中旬、ベン・バーナンキFRB(米連邦準備理事会)議長がテレビ番組『60ミニッツ』で、経済回復の「若い芽」が出たと語ったのは良いタイミングだった。以来「若い芽」という言葉は育ち、花開いた。
希望の兆しを求めて躍起になっていたアナリストやジャーナリストは、この言葉を心を落ち着かせる呪文のように繰り返し唱えだした。エコノミストは今、成長の兆しを探し回っている。
今なぜ、楽観主義が広がったのか? ウェルズ・ファーゴやゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェースなどの金融機関が軒並み、最近では珍しい偉業──黒字決算──を達成しそうだからだ。
4月15日にFRBが発表した全米12地区の連銀の景況報告(ベージュブック)は、数地区で「一部の業種に低い水準で安定する兆しがあった」としている。ローレンス・サマーズ国家経済会議(NEC)委員長も4月初旬、「景況感の悪化の底が見えない状態は数カ月以内に終わる」と語った。
根拠に乏しい話だ。だが困難だったこの1年を振り返ると、明るい兆しには何だって飛び付きたくなるのも分かる。
誤診も多かったバーナンキ
残念ながらバーナンキはこれまで、経済の芽を育てる才能は見せていない。不運なことに、彼の議長就任は住宅市場がちょうどピークに達していた06年2月だった。それ以来、国の経済の根幹をむしばむ病に対する彼の診断は、常に正しいとはいえなかった。
例えば、バーナンキは07年5月、「サブプライム問題が経済全体または金融システムに与える影響は限定的だ」と、主張している。
経済理論によれば、安い資本という形で大量の「肥料」が広く施されていれば、もう「若い芽」が出ていてもいいはずだ。だが今のところいい知らせ、つまり若い芽のすべては条件付きだ。
ゴールドマン・サックスの1~3月期の業績は良かったが、それは決算期を11月末から12月末に変更し、損失を計上した08年12月を除外したからだ。JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEO(最高経営責任者)は、予想を上回る好業績に、政府から借りた資金の早期返済を約束したが、同時にカードローンの焦げ付きの増加も報告した。
もちろん、どの地域を見るかで景気の見方も変わる。ニューヨークは、「雇用は下向き」で観光業にも「衰退が見られる」とベージュブックが指摘しており、悲観的な面が強く感じられる。
一方、シカゴとその周辺の地域では希望の兆候が明らかだ。好況時にもそれほど盛り上がらず、不況でもそれほど落ち込まなったこの地域は、かなり持ち直している。シカゴの経済はニューヨークほど金融に頼っていない。
FRBの3月の報告によれば「消費者の支出はいくらか改善し、企業支出にはあまり変化がない」。長い冬の後、シカゴ周辺の人々にはついに暖かい春の日差しが戻ってきたというわけだ。
賑わいは戻っても失業率は9%
「街角に人が戻ってきた」と、高級ショッピング街ミシガン・アベニューを見渡せる位置にあるオムニ・ホテルの支配人ビル・ベネットは言う。同ホテルの室料は昨年より20%安いとはいえ、週末には全347室が満室となる。しかし「若い芽」の大半は例外的な存在だ。シカゴ一帯の失業率は9%に達している。
ミシガン湖畔の新築高層マンションはどれも売り尽くしセール中。高級百貨店のニーマン・マーカスやティファニーは、シカゴ大学の図書館並みに静かだ。
これからは希望の芽も顔を出すかもしれないが、墓場行きの企業も増える。経済回復が本物だと分かるのは、言葉だけでなく現実に重要な経済指標が上向いたときだ。大手銀行が政府から受け取った資金を返済し、消費意欲が回復した証拠が全米のショッピングモールで見られ、株価の上昇が企業収益の伸びによって裏打ちされて初めてそうなる。
今はまだ、そこまでではない。3月の小売業の売上高は2月より1・1%下がり、住宅差し押さえは再び増加。4月の終わりには、気落ちする経済データがどっと発表されるはずだ。人員削減や失業率の大幅な上昇が起き、「若い芽」を探す動きが再び出る。
そして楽観的な庭師はいつも、「4月の雨は5月の花を咲かせる」と言うものだ。