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『アレキサンダー』
観客もぐったりの壮大な大遠征
アレキサンダー(コリン・ファレル)は25歳の若さで世界征服をめざす Photo12/amanaimages
今どき世界征服を企てる男の話なんて、どうやって映画化すればいいのだろう。オリバー・ストーン監督の3時間近い歴史大作『アレキサンダー』を見ていると、そんな疑問を感じてしまう。マケドニアの王アレキサンダーは紀元前4世紀、25歳の若さでギリシャからインドまで支配した。現代人から見れば、野望もそこまでいくと狂気のさただ。
しかし、ストーンの見方は違ったようだ。彼はこれまで反体制を旗印にしてきたが、本当は根っからのヒーロー崇拝者。強い男が好きだということは、『ウォール街』や『JFK』『ニクソン』を見ても一目瞭然だ。なかでも『アレキサンダー』は、極めつきのヒーロー映画になるはずだった。
しかし、野心的な試みは無残な失敗に終わっている。壮大な戦闘シーンに豪華なセット、ギリシャ悲劇ばりのドラマと三拍子そろっているのに、作品全体に生かされていない。ストーンが描くアレキサンダー(コリン・ファレル)はブッシュ政権のネオコンたちを連想させるものの、この作品には政治的なメッセージもない。
『アレキサンダー』は延々と続く行進のような作品だ。目的地が見えないまま、観客は長い遠征につき合わされる羽目になる。
[2005年2月 9日号掲載]