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世界が見た日本政治
政権交代をかけた総選挙が迫っている 混迷するニッポン政治の出口は
リーダー不在のポンコツ日本政治
首相は1年で交代し、財務相は醜態を世界にさらす――世界第2の経済大国になぜ無能な指導者しか生まれないのか。チェンジできない自民党支配は1日も早く一掃すべきだ
中川昭一前財務・金融担当相には同情を禁じえない。2月13〜14日、ローマで開かれた主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)に出席した中川は、会議後の記者会見に深酒を疑われる状態で出席。ろれつが回らずに、世界中に醜態をさらす格好になった。
中川は帰国後、まもなく辞任した。だが本当の「問題児」は、辞任していない人物のほうなのかもしれない。
中川を主要閣僚に起用した麻生太郎首相の支持率は、一部の世論調査で1けたに落ち込んだ。戦後最悪ともいわれる深刻な景気後退に見舞われているというのに、現政権の政策には一貫性が見えない。それでも麻生自身は首相の座にとどまっている。
麻生は失言を繰り返し、攻勢を強める野党と折り合いをつけることにも失敗した。日本は今こそ強力なリーダーシップが必要だが、政治はマヒ状態に陥っている。
だが麻生と与党・自由民主党の苦境は、さらに重大な問題を浮き彫りにしている。きわめて深刻なリーダー不足だ。日本国民が信頼できる政治家の不在をこれほど痛感したのは、今回が初めてかもしれない。朝日新聞は2月27日付の社説で、そのムードを「政治空白はもういい」と表現した。
日本はビジネス、文化、テクノロジーの分野で世界の主要プレーヤーだが、政治は不安定な中南米諸国のようだ。なぜこんなことになったのか。
総選挙の洗礼を受けていない麻生が厳しい政権運営を強いられているのは、必ずしも意外ではない。それに前任者2人もリーダーとしての強さに欠けていた。福田康夫前首相は昨年9月1日、在任1年間で政権を投げ出した。福田の前任の安倍晋三元首相も就任から1年後に、目に涙を浮かべて「健康上の理由」で辞任すると発表した。
だが麻生の仕事ぶりは、こうした低レベルの基準からみてもいただけない。麻生政権は昨年9月の誕生以来、国会の手詰まり状態に苦しみ、総額2兆円にのぼる定額給付金の問題に振り回されてきた。
麻生の失言癖は、首相就任以前から何度も問題になっていた。あるときは野党・民主党をナチスになぞらえ、戦前の植民地支配を美化するかのような発言をしたかと思えば、アルツハイマー病を例えに使う無神経なジョークを飛ばしたこともある。
麻生や自民党の同僚議員が不適切発言を繰り返す理由は、いくつも指摘されている。まず、能力より年齢を重視する日本の伝統に原因があるという説。日本の硬直した教育をやり玉にあげる向きもある。政界と経済界に深く根を下ろした「身内びいき」のせいで、真剣な政策論議より仲間内の取引が優先されているという意見もある。
自民党は冷戦時代の遺物
だが最大の「元凶」は何かについては、ほとんどの識者の意見が一致する。1955年の結党以来、ほぼ一貫して権力を独占してきた自民党そのものだ。
日本では長い間、自民党以外に政権の選択肢はないも同然だった。冷戦時代、社会党や共産党の急進的な主張についていけない多数派の国民は、自民党に投票するしかなかった。
自民党はその間に経済界との癒着を強め、うまみの大きい公共事業や業界に有利な規制と引き換えに政治献金を手に入れた。その結果、密室の裏取引が横行し、国民への説明責任をないがしろにする政治文化が生まれ、現職議員などの既得権益層と体制順応派、日和見主義者ばかりが優遇される「システム」が出来上がった。
それでも日本経済が好調な間は、このシステムの欠陥は目立たなかった。円滑に機能する官僚制と有能な企業経営者が十分な経済成長を国民にもたらし、政治家は富のおこぼれを地元選挙区にばらまくだけでよかった。