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世界が見た日本政治
政権交代をかけた総選挙が迫っている 混迷するニッポン政治の出口は
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不況が救う膠着ニッポン
世界的な経済危機のおかげで自民党は崩壊へ。今年はついに「機能する」政府が誕生するかもしれない
賞味期限切れ 支持率が低迷する麻生首相は自民党最後の首相になるのか(08年12月24日の記者会見) Toru Hanai-Reuters
不況は多くの国では政治的なリスクとなる。大衆迎合主義や保護主義が高まったり、抗議デモ、内紛、革命、場合によっては戦争すら起きかねない。
だが少なくとも、ある重要な1カ国は今の不況から政治的な恩恵を受けることができそうだ。その国とは、アメリカに次ぐ世界第2の経済大国ながら政治の行き詰まりに苦しんでいる日本である。
今年9月までに総選挙が行われるため、それが行き詰まりを打開する可能性が高い。それ以上に劇的なのは、過去53年間のほぼ全期間にわたって日本を統治してきた自由民主党が大打撃を受けることが確実で、もしかすると完全に崩壊するかもしれないことだ。
日本政治の苦難は、民主党が参議院の過半数を制した07年7月の参議院選挙よりはるか前にさかのぼる。だが参院選以来、政府の機能は実質的に停止している。これは差し迫った問題であり、早急に手を打つ必要がある。
自民党と公明党の連立与党は、小泉純一郎首相の下で05年に行われた衆議院選挙での圧勝のおかげで、衆議院の議席の3分の2以上を確保している。このため参議院の議決を覆すことができる。
早期選挙に踏み切るか
しかし与党が多数の力で再議決を試みるたびに支持率は低下する。07年の民主党の勝利は、自民党の不人気という政治の現実を反映した現象にすぎない。
自民党は過去10年以上凋落の一途をたどっている。1955年の結党以降、93〜94年の11カ月間を除く全期間で政権に就いてきたが、政党としての機能は衰え、スキャンダルと失敗が目立ってきた。
小泉が01年に首相になれたのは、「自民党を変える、日本を変える」のスローガンの下、党に事実上の反旗を翻したからだ。彼の5年の在任期間は日本が90年代の不況から回復する時期と重なり、彼はさまざまな改革に成功した。
だが小泉は自民党を変身させることはできず、その結果日本の改革も停滞した。彼が首相の座を退いた06年以降、後を継いだ3人の自民党出身の首相----安倍晋三、福田康夫そして現職の麻生太郎は記録的な低支持率に苦しんでいる。
9月に衆議院議員の任期が満了するため、自民党はそれまでに総選挙に臨まなくてはならない。世論調査によると、とくに不況のせいで自民党の大敗が予想されている。新聞報道によれば、もっと人気のある人物を首相にするために麻生が選挙前に辞任するという噂もある。
だがそんな捨て身の手段が取られる可能性は低そうだ。むしろ自民党からの離脱が相次げば、麻生はもっと早く選挙に踏み切らざるをえなくなるかもしれない。
日本の多くの有権者にとって選挙は早いほどいい。だが民主党がとくに魅力的だとか能力があるというわけではない。民主党の小沢一郎代表は、人気がない点では麻生といい勝負だ。日本に必要なのは、国会の両院で法律を可決することができて、財政政策など基本的な政策について団結を保つことができる政府である。
新政権に奇跡を望むな
自民党にとって直近の災難は、若手のホープである渡辺喜美・元行革担当相が予算案をめぐって公然と離党の可能性に言及していること。離党した場合、渡辺は民主党に入るか、無所属のまま民主党と共闘するだろう。他の自民党議員も彼に続く可能性が大いにある。
だが起こりうる最も劇的な変化は、半世紀ぶりに選挙で強力な非自民党政権が誕生し、幅広い政界再編が行われることだ。そのような変化は総選挙で民主党が勝利するか、選挙後に政界再編が起きるか、あるいはその両方から生じる可能性がある。
個人消費支出の低迷、円高、巨額の財政赤字によって日本経済が崖っぷちにある今、新政権が奇跡を起こすことを期待してはいけない。だが変化自体は歓迎すべきことだ。機能する政府が誕生すれば、それだけでも素晴らしい。
[2009年1月21日号掲載]