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『プリズン・ブレイク』 何度脱獄すれば気がすむの?
荒唐無稽なシーズン3は無理やりな展開に頭が痛くなる
『プリズン・ブレイク』のシーズン3の舞台は再び監獄に戻る。今回はパナマにあるソーナとよばれる特殊な刑務所だ。
ソーナは巨大な闘技場を思わせる。囚人たちの戦いは暴動というより、ローマの剣闘士の対決のようだ。囚人たちの国籍は27の国々にわたり、ある登場人物いわく「ここにいるのは、極悪人のなかの極悪人」だ。
そう、ソーナはマイケル・スコフィールド(ウェントワース・ミラー)がシーズン1で入っていた刑務所よりも強烈な場所だ。だが流れる血や臓物の量が増えても、前に見た感じはぬぐえない。
マイケルに会いに来た兄のリンカーン・バローズ(ドミニク・パーセル)は、檻の向こうから弟を見つめ、「俺はまちがった側にいるような気がする」と言う。マイケルはリンカーンが自分を脱獄させてくれるかどうかを知りたがる。「怖いか?」と、リンカーンは尋ねる。「俺がここから出してやるよ」
リンカーンはまちがった側にいるというより、このシリーズに出続けていること自体がまちがいだろう。
『プリズン・ブレイク』のシーズン1は素晴らしかった。『LOST』に匹敵する緊張感にあふれていた。無実の罪で重警備刑務所に入れられた兄が死刑になる前に、弟が計画的に刑務所に入所し一緒に脱獄をはかるという設定は完璧。だがマイケル、リンカーンやそのほかの囚人が早々と脱獄したことで、脚本家は墓穴を掘った。
話の構成に無理がある
シーズン2は世界を股にかけた逃亡劇で『逃亡者』のまねにみえた。シーズン1ほど独創的ではなかったものの、まだドラマは魅力的で興味が持続した。
だが今、マイケルが再び刑務所に戻るとなると、物語の構造自体がばかばかしくみえる。リンカーンの息子とマイケルの恋人が誘拐され、誘拐犯は無事に返す条件としてマイケルに仲間の囚人とともに脱獄するよう要求する、という展開になる。
前に聞いたような話だ。シーズン1でマイケルは兄と2人でアメリカの刑務所からの脱獄を計画した。『LOST』も荒唐無稽すぎる展開になったが、前に使った思いつきをリサイクルすることはなかった。
ソーナで戦いが始まると、シーズン1の刑務所がいかに恐ろしく見えたかを思い出すばかり。新しい登場人物は次の見せ場までのつなぎに登場するだけで興味をそそらない。なかでもマイケルとともに脱獄する謎めいた囚人ジェームズ・ウィスラー(クリス・バンス)は、悪人なのか善人なのかわからない(ひょっとしたら、脚本家がまだ決めていないのかもしれない)。
あの超有名作家も混乱
シーズン3の結末にはそれまでの話をひっくり返す驚きがあるが、すべての登場人物が無理やり操られているようで、むしろどうでもよくなってくる。シリーズのファンである作家のスティーブン・キングも「どうなっているのかまったくわからない」とコラムに書いている。
残念ながらこのドラマの数々の謎は、舞台がアメリカに戻るシーズン4になってもいっこうに明らかになる気配はない。驚いたことに、シーズン3で死んだはずのキャラクターが戻ってくる。首を切られるという衝撃的な死だったにもかかわらず。
頭が痛くなった? みんな同じだ。「シーズン4の『刑務所』は寓意的なもの」と、刑務所の医師サラを演じたサラ・キャリーズはインタビューで語っている。「誰もが逃れられない自分の人生の何かと戦っている」
本当に? マイケルはそろそろ『プリズン・ブレイク』からの脱出を考えたほうがいいかもしれない。
[2008年12月17日号掲載]