最新記事
世界が尊敬する日本人
国境と文化の壁を越えて輝く
天才・鬼才・異才
ニューストピックス
岡部万里江(国連事務総長次席報道官)
国連を陰で支える腕利きの女性報道官
岡部は1女1男の母にして、潘基文(バン・キムン)国連事務総長の次席報道官だ。過去6カ月の間にローマ法王に謁見したほか、潘とともにカタールとシリアを訪問。スーダンの紛争地帯ダルフールには、難民の現状を取材してもらおうとジャーナリストを送り込んだ。
岡部の机には、92年に国連で働きはじめてから宿泊した世界各地のホテルのカードキーが、小さな山を作っている。机の後ろのボードにはアフリカの地図が3枚張られ、その上には「ガーナからこんにちは」の旗。この旗はシエラレオネを訪問した際、平和維持部隊からもらったものだ(アフリカ54カ国中30カ国を訪問)。
壁には娘が描いた絵に交じり、スイスの世界経済フォーラムで女優アンジェリーナ・ジョリーと撮ったツーショットなどが飾られている。「仕事のおかげで面白い人に会えるし、世界を途方もない場所から見渡すことができる」と、岡部は言う。
ニューヨークと東京で育った岡部は、英語と日本語のバイリンガル(基本的なフランス語もマスターしている)だ。大学院を出た後、アメリカと日本でUPI通信に勤務し、92年に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の広報部門に職を得てスイスに移住。ソマリアの砂漠やアフガニスタン国境地帯の難民キャンプを訪ねる日々が始まった。
数年後、国連本部でUNHCRの上級連絡官を務めるため、家族とともにニューヨークに移った。99年には准報道官として国連事務総長の広報部門に入り、05年にコフィ・アナン事務総長の次席報道官に任命された。
歴史作りに関わる喜び
今年、アナンの後を引き継いだ潘は報道官を刷新。だが国連の内部事情に詳しく、マスコミに通じた岡部は、そのまま次席報道官にとどまることになった。
出張に飛び回っていないときの仕事は、毎朝5時半に始まる。自宅のパソコンでニュースをチェックし、事務総長が目を通しておくべき記事を選ぶ。本誌が取材した日は、コソボ自治州での爆発事件やビルマ(ミャンマー)の反政府デモのニュースをピックアップ。
8時には選んだニュースを事務総長に送信し、9時15分までに出勤。事務総長の上級顧問やときには事務総長本人と打ち合わせをした後、昼の記者向けブリーフィングやプレスイベントの準備をする。ブリーフィング後、その内容を3時までに文書にまとめる。
その合間に事務総長の外遊の準備などを行い、最新ニュースにも気を配る。「いつも何かしら仕事がある。同じような日は一日もない」と、岡部は言う。
第62回国連総会を控えた9月、岡部らは週末も仕事に追われた。事務総長の会議や記者会見、70を超える国家元首との会合などの段取りをつけなければならない。
総会が始まると、世界から2000人が集まるマスコミへの対応や通訳の手配に追われる。各国首脳に取材を希望する記者のため、警備担当者との折衝にもあたる。
「すごい仕事に就いたと思う」と、岡部は語る。「歴史がつくられる現場を見守り、多少なりともそこにかかわれる私は、本当にラッキーな人間だ」
[2007年10月17日号掲載]