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ダイムラーとクライスラー、世紀の大合併

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2009.04.08

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ダイムラーとクライスラー、世紀の大合併

欧州で高級車に強いダイムラーとアメリカでSUVに強いクライスラーが互いを補完できれば、最強の結婚になる──自動車大再編の号砲を鳴らした巨大合併の論理

2009年4月8日(水)17時10分
ダニエル・マギン(デトロイト支局長)、マイケル・ハーシュ(ワシントン)

 クライスラーのロバート・イートン会長が好んでする話がある。会長に就任してまもなく、幹部連と研修旅行をしたときの話だ。

 当時、クライスラーは経営不振から抜け出し、業績を急拡大させていた。イートンは部下の前で、クライスラーの経営を褒めたたえる新聞の見出しを次々に読み上げた。そしてその後で、こうつけ加えた----いま読んだ記事は、実はどれも一〇年以上も前のものだ。

 イートンは、クライスラーの歴史から大きな教訓を学んでいた。絶賛されるようになったら下り坂が待っている。会社の規模が小さく、国内市場への依存度が高すぎるクライスラーは、すぐに大きな経営危機に見舞われることになる。

 六年前に会長に就任して以来、この教訓はイートンの頭から離れたことがない。二度と会社を瀕死の状態に陥らせてはならない、と。

業界再編が加速する理由

 そのクライスラーが先週、ダイムラー・ベンツとの合併を発表して全世界に衝撃を与えた。自動車業界では史上最大の合併で、一三〇〇億ドル規模の巨大企業が誕生する。これで「アメリカ企業」としてのクライスラーは姿を消すが、自動車産業にとっては再編の波の始まりになりそうだ。

 ウォール街では、フィアットやプジョー、ルノー、日産などが吸収合併の「次の候補」として取りざたされている。今やビッグツーとなったフォードとゼネラル・モーターズ(GM)は、それぞれ韓国の起亜自動車、大宇自動車との提携の強化を模索している。

 また、ダイムラー・クライスラーの誕生と同じ日、ロールスロイスの買収合戦でフォルクスワーゲンがBMWに勝利を収めた。

 業界再編が加速している理由は単純だ。車の開発には莫大な金がかかり、会社が大きいほどそれを負担しやすくなる。また信頼性やデザイン、装備などの面で車の差が小さくなり、ブランド力の強みが増した。そうなると、ゼロから始めるよりも、有名ブランドを買収するほうが手っ取り早い。

 だが今回の合併には、ブランド競争だけでは語り尽くせないものがある。

 かつて政府が救済に乗り出したほどの名門企業が、外国企業と合併することになったというのに、アメリカ国内の反応は冷静だった。ウォール街のアナリストたちは、両社の補完的関係などシナジー効果の分析に躍起で、ナショナリズムなど眼中にないようだ。

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