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転落の構図
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米自動車20年間の勘違い
フォードの買い物は大成功
すでにジャガーやマツダを傘下に入れているフォードがボルボを買収。規模拡大で品揃えの優位性を競う「世界6強時代」を視野に入れたブランド争奪戦が始まった
握手するフォードのナッサーCEO(左)とボルボのヨハンソン社長
Reuters
フォードのジャック・ナッサー社長は、何をやっても有能なことで知られている。だが、ゆっくり休むことだけは苦手だ。
仕事人間の彼は、毎朝六時前には出社している。感謝祭などでアメリカ中が休むときにも、国外の拠点に出かけてまで仕事をする。
だが今年初め、ナッサーが年末にスウェーデンのボルボと買収交渉をしていたらしいという噂が流れると、自分は休暇中だったと言って否定した。とんでもない、そのころはビーチで家族とのんびり過ごしていた、というのだ。
いずれにせよ、ボルボ買収の噂を消すことはできなかった。「フォードは、二三〇億ドルものキャッシュをもっていた」と、フォード車ディーラーのマーティン・マキナリーは言う。「これで何も買わないなら、そのほうがおかしい」
先週、フォードはついに金を取り出した。一月二八日、六五億ドルでボルボの乗用車部門を買収すると発表したのだ。
ライバルメーカーは高い買い物だとケチをつけるが、ウォール街はこの買収を評価している。フォード車のディーラーも、ボルボ車を扱えるようになることを歓迎しているし、愛国心の強いスウェーデン人さえ、今回の買収は正解だと認めている。
世界的な合従連衡が予想される自動車産業で、この買収は昨年のダイムラーベンツとクライスラーの合併に続く大ニュースだ。
「かつてアメリカで、一五〇ある自動車メーカーが六社前後に集約された時代があった」と、ダイムラークライスラーのロバート・イートン共同会長は言う。「あのとき以来の大再編が起こるだろう」