コラム

イスラエルに根付く「被害者意識」は、なぜ国際社会と大きくかけ離れているのか?

2024年06月10日(月)15時25分

国外に目を転じれば、将来のリーダーたるアメリカのエリート大学の学生たちはイスラエルを非難する。米クインシー研究所のトリタ・パルシは、「イスラエルの『被害者性』という立場は失われた」と話し、イスラエルを被害者とする見方は薄れていくと指摘する。

しかし、社会に内在する被害者意識、そして、それが建国の正統性ともつながるが故に、普段は冷静なイスラエル人たちがこうした現実を受け止められずにいる。

ユダヤ人はホロコーストにおいて「被害者」だ。今回のハマスの攻撃によって再び「被害者」になったことも明白だ。しかし同時にパレスチナ人からしてみれば、イスラエルは今「加害者」でもある。

イスラエルの被害者意識と、国際社会の大方の見方には大きなギャップがある。

社会に根付く被害者意識に理解を示しつつ、幾重にも重なるトラウマの殻を一つ一つ丁寧に取り除かなければならない。そうすることでしか、国際社会が「親」や「反」などに分断して狂乱するこの紛争を解決し、世界の分断を埋めることはできない。

プロフィール

曽我太一

ジャーナリスト。東京外国語大学大学院修了後、NHK入局。札幌放送局などを経て、報道局国際部で移民・難民政策、欧州情勢などを担当し、2020年からエルサレム支局長として和平問題やテック業界を取材。ロシア・ウクライナ戦争では現地入りした。2023年末よりフリーランスに。エルサレム在住。

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