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パックンの風刺画コラム Superpower Satire (USA)
アメリカで急速に広まった言葉「Meh」の背景にある国民の気分とは?
©2023 ROGERS–ANDREWS McMEEL SYNDICATION
<20年足らずであっという間に広がったスラングが表す政治への絶望を、米出身の芸人パックンが読み解きます>
史上最高のバイリンガル(自称)の僕でも、英訳・和訳しづらい単語はある。例えば寿司ネタの「トロ」。よくFatty Tunaと訳されるがこれじゃ「デブマグロ」だから納得がいかない。英語でもToroがベストだろう。
今回のキーワード「Meh(メ)」も訳し難い。「〇〇は好き?」などと聞かれたときにする生ぬるい返事だ。批判するほど興味もなく、「どちらでもいい」というより「どうでもいい」感じ。昔騒ぎになった沢尻エリカさんの「別に」に近いけど、「別に」は3音節。3音節も発するのが面倒なときに便利なのがメだ。
ちなみに、Mehの語源はイディッシュ語など諸説あるが、人気アニメ『ザ・シンプソンズ』で初めてマスメディアに登場して20年もたっていないのに、既にオックスフォード辞典にも加えられ、日常語になっている。言葉の由来って面白いよね?
Meh。
そう、そんな使い方! 便利でしょ? ぜひ日本語に導入しよう。
そのためのいい教材に、今回の風刺画は......ならない。この言葉は普通、映画や料理、セレブなどへの評価を表すもの。「(パックンマックンの)マックンは好きですか?」へのMehは模範解答だ。だが、国民の命、人権、自由や主権などへの重大な脅威にはMehは用いない。無関心じゃ駄目だから。
風刺画で取り上げている、気候変動や銃暴力、人工中絶の制限、LGBTQの権利侵害、そして民主主義的規範の崩壊は全くMehではないはず。だが、世論調査を見ると、これらの問題を重要視するアメリカ人の割合は絶望的に低い。
もちろん、支持政党によって態度は違う。民主党支持者はこれらの問題に敏感だが、共和党支持者は温暖化や銃暴力に関して民主党より関心度が40~50%も低い。まさにMehな状態。
もっと怖いことに、共和党支持者は中絶やLGBTQの権利の制限やトランプ(過去の大統領で将来の独裁者候補)のカムバックに関してはMehではなく、とても前向きだ。つまり風刺画の作者から見て、共和党自体が脅威となっている。
しかし政治疲れしているアメリカ人は、共和党の暴走も含め無関心な人が多い。政党もMehなら、国民もMeh。これじゃ、問題は悪化する一方。一番恐ろしいMehにはMehをだね。
ポイント
POLLING
世論調査
ARE YOU CONCERNED BY HOW FAST THE PLANET IS WARMING?
地球温暖化の進行具合は心配ですか?
ARE YOU UPSET THAT GUNS ARE THE #1 KILLER OF CHILDREN?
子供たちの死因第1位が銃によるものであることを懸念していますか?
ARE YOU ALARMED BY THE ATTACKS ON REPRODUCTIVE FREEDOM AND LGBTQ RIGHTS?
生殖(中絶)の自由、LGBTQの権利が脅かされていることに危機感を感じますか?
ARE YOU BOTHERED THAT TRUMP WANTS TO TURN OUR DEMOCRACY INTO A DICTATORSHIP?
トランプが民主主義を独裁体制に変えたいと思っていることは気がかりですか?