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パックンの風刺画コラム Superpower Satire (USA)
バイデンの「大人外交」は実は血みどろ(パックン)
A "MATURE" DIPLOMACY / (C)2021 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION
<記者殺害事件でサウジアラビアと皇太子を厳しく批判する......はずだったバイデン政権だが>
ワシントン・ポストなどに寄稿するサウジアラビア人記者、Jamal Khashoggi(ジャマル・カショギ)。サウジアラビア政府のイエメンへの軍事介入やカタールへの経済封鎖、またメディア弾圧、イスラム過激派への援助といった国内政策、そしてサウド家の王政や最高実力者のムハンマド・ビン・サルマン皇太子をも、自らの危険を顧みず批判してきた勇者......だった。
カショギは2018年10月に、トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で殺された。バラバラにされた遺体はいまだ見つかっていない。骨の切断用具を持参し犯行に及んだのはサウジアラビアの殺し屋チーム。命令したのはムハンマド皇太子だ。風刺画でのこぎりに付いている「MBS」はムハンマドのイニシャル。芸人としてこれで「あいうえお作文」でも作りたいが、命懸けの大喜利はやめよう。
アメリカ政府は先月、皇太子がカショギの殺害計画を承認したことなど、事件の詳細をまとめた報告書を公表した。前政権はその内容を知っていたはずだが、トランプ前大統領はサウジ政府や皇太子に対する批判も制裁もしなかった。
ジョー・バイデンは大統領選中、人権を重視するアメリカ本来の外交姿勢を取り戻すため、サウジアラビア政府を「パーリア(のけ者)にする」と公約していたので期待が集まっていた。ところが就任後も結局はサウジアラビアや皇太子を批判していない。公約を聞き間違ったかな? 「パエリアにする」と、ファミレスの注文を決めていただけかもね。
なぜひるんだのか? サウジアラビアは大事なパートナー国だからだ。対テロ戦やパレスチナ問題、イランへの牽制、イラン核合意への復帰においても、アラブ諸国のリーダーとしてサウジアラビアの協力は欠かせない。
さらに、5つもの米軍基地を抱える軍事パートナーで、アメリカの軍需産業にとって世界一のお得意さんでもある。もちろんアメリカが突き放したら、中近東でのプレゼンスを高めようとしている、人権問題を全く気にしない中国が喜んでその穴を埋めに来る。
そんなわけでサウジの次期国王を殺人鬼扱いできないと、バイデンは外交上の「大人の判断」をしたのだろう。理解できても納得しづらい。カショギならどう評価したかな。
【ポイント】
THIS IS WHAT DIPLOMACY LOOKS LIKE
外交っていうのはこういうもんよ
CAUTION: BLOODY ALLIANCE
注意:血塗られた同盟関係
KHASHOGGI MURDER(床に書かれている血文字)
カショギ殺害
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